2019年12月13日 1604号

【日韓GSOMIA条件付き継続/外交でも大ウソつきの安倍政権/戦後補償を行い 和平に進め】

 韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)継続を発表した後の日本政府のコメントが混乱を引き起こした。安倍政権は外交でも大ウソをついていた。日本政府は対韓経済制裁を解除し、徴用工問題をはじめ戦後責任に誠実に向き合うべきである。朝鮮半島の和平協議を促進させ、GSOMIAを不要なものへと追い込まねばならない。

破棄中断の前提条件

 日韓のGSOMIAは、11月23日午前0時で自動的に失効するはずだった。だがその6時間前、韓国政府は「破棄通告の効力の一時停止」を表明。「いつでも失効可能」との前提で、GSOMIAは当面継続することになった。韓国政府は方針変更した理由に、日本政府が輸出管理強化(経済制裁)解除にむけた協議に応じたことを上げた。

 文在寅(ムンジェイン)政権が8月にGSOMIA破棄通告に踏みきったのは、安倍政権がとった対韓国輸出管理強化、いわゆる「グループA(ホワイト国から改称)」からの除外措置撤回を求めてだった。その後も制裁解除に応じない日本政府の対応を「政治利用で不当」として、WTOに提訴。紛争処理小委員会の設置に手続きに移っていたが、韓国政府は今回、この手続きも停止した。

 GSOMIA失効を前に、協議をかたくなに拒否してきた日本政府が1週間ほど前に局長級会談を提案した。「グループAへの復元に1か月かかる」と解除への事務手続きに言及したという(11/25韓国紙ハンギョレ)。両政府は、制裁解除にむけ実務者協議に入ることで合意した。

 日米韓の軍事ブロックに亀裂が入るのをおそれる米政府。エスパー国防長官が訪韓(11/15)し、韓国政府に翻意を促した。在韓米軍の駐留経費増額要求まで持ち出して、GSOMIA継続を迫っていた。だが、8月の破棄表明時から「失望した」と米政府が繰り返しても、韓国政府は対日交渉カードを持ち続けた。たしかに方針変更の背景に米政府の圧力があった。それは対韓国政府だけでなく、日本政府に対してもあったことがうかがえる。打開策は日本政府が持ち出したからだ。韓国政府はその提案に乗った。

「パーフェクト」?

 ところが日本では、日本は一切妥協せず、韓国政府が米圧力に屈したと強調する報道がほとんどだ。「協議には応じるが、一切妥協しない」「パーフェクトゲーム」(政府高官11/22産経)。この言葉が報道されるや、すぐに韓国政府から抗議を受けた。「外交交渉における信義誠実の原則に反したもの」(11/25ハンギョレ)。安倍晋三首相が「何も譲っていない」と語れば、「果たして良心を持って言ったのか問いただしたい」と厳しく批判された。

 日韓外相会議(11/23)の場で、「経産省が誇張された内容で発表したことについて、謝罪する。合意した内容には何ら変わりがない」と再確認。外務省サイドはミスリードを認めた。ところがだ。梶山弘志経産相は「(謝罪の)事実はない」(11/25)と否定したものの、翌日には「外交上の問題もあり、答えるのは控えたい」と言葉を濁した。経産・外務両省のさや当てはあったにせよ、日本政府は韓国との合意内容をねじ曲げて、「パーフェクトゲーム」と印象付けたのだ。

 なぜ、すぐばれるような稚拙なウソをつくのか。安倍政権は首相主催「桜を見る会」をめぐる腐敗実態が暴かれ、政権支持率が低下する状況にあった。対韓国強硬姿勢は政権支持率の唯一プラス要素。それに反する「妥協」は口にできないのだ。

徴用工問題の解決を

 日韓関係が悪化している最大の原因は、安倍政権が徴用工問題はじめとした戦後補償に向き合おうとしないことにある。植民地支配の謝罪・補償から逃げ回っていることが事態を悪化させている。

 経済制裁も大法院徴用工判決を抑え込むためにひねり出した嫌がらせだった。「日韓請求権協定で解決済み」との誤った見解を吹聴し「国際法違反の状態を是正せよ」と繰り返している。日本政府は、国際司法裁判所への提訴を口にしてみたものの、争えば負けることは目に見えている。

 日本政府の不誠実な姿勢は世界では通用しない。請求権協定による5億ドル供与・貸付(無償3億ドルは、物品や役務)も「経済協力」と言いながら、実質「賠償金」だったと使い分ける二枚舌。個人の請求権は消滅しないとの見解であるにもかかわらず、徴用工問題では「完全かつ最終的に解決」と個人請求権を認めないと矛盾した立場をとっている。

 安倍政権は、ごまかすことなく、解決に向けた交渉に臨まねばならない。

軍事緊張を解け

 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)がロケット砲発射訓練などを繰り返している。米朝協議、経済制裁解除が進まないことへのいら立ちからだ。こうした事態に、日韓GSOMMIAの継続を歓迎する報道があふれている。だが、GSOMIAは対朝鮮と言うより対中、対ソ軍事緊張を高めるものであり、東アジアに平和を呼び寄せるものではない。

 3年前、朴槿恵政権(当時)はTHAAD(サード)(高高度防衛ミサイル)とともにGSOMIAを受け入れたが、根強い市民の抗議行動があった。大統領候補だった文在寅はTHAADもGSOMIAも廃棄すると公約していた。

 事前の世論調査では破棄賛成が55・4%、反対33・2%(11/18世論調査会社「リアルメーター」)だった。今回の条件付き継続の決定に70・7%が賛意を示した(11/25同「コリアリサーチ」)。だが民意が変わったわけではない。日本側が譲歩しなければ、終了すべきとする回答は53%。過半数に達している。実際、市民の抗議行動は続いている。

 軍事挑発ではなく、誠実な外交関係の構築こそ市民は求めている。18年9月の南北首脳会談での「ピョンヤン共同宣言」「板門店(パンムンジョム)軍事分野合意書」が軍事挑発を抑え込む力になった。GSOMIAは破棄し、戦後補償問題を誠実に解決せよ。日韓両政府に要求しよう。東アジアの平和を望むすべての市民とともに、米朝交渉を先に進めろと声を上げよう。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS