2019年12月13日 1604号

【ZENKOスピーキングツアー ノ・ミンギュさん 報告要旨 韓国平和運動と済州島基地/四・三事件は今も進行】

 12月1日ZENKOスピーキングツアー東京集会では済州(チェジュ)島の市民活動家ノ・ミンギュさんが報告した。(4・5面に関連記事)

 計画中の第2空港は済州空港からわずか40`。そこに3200bの滑走路を造ろうとしている。島南部には江汀(カンジョン)海軍基地がある。南西部のアルトゥル飛行場は旧日本軍が中国攻略のため1937年に造ったもので、南京大虐殺と密接に関係する。

 済州島から奄美大島、沖縄、宮古島、石垣島、与那国島、台湾へとつながる島々は、アメリカの対中国戦略の前哨基地になっている。

 11月中旬、全羅北道(チョルラプクト)の群山(クンサン)で平和活動家大会が開かれた。確認されたのは、京畿道(キョンギド)の平沢(ピョンテク)、群山、星州(ソンジュ)、済州島の江汀、第2空港予定地の城山(ソンサン)の各基地は互いに結びついており、朝鮮半島を非核地帯にしていかなければならないこと、韓米同盟に反対し軍備を縮小し南北の分断を脱却することだ。

 韓国の平和活動は武器監視キャンペーン(ADEX=国際航空宇宙防衛産業見本市、通称ソウル・エアショー=反対運動)や「戦争のない世界」=良心的兵役拒否、2002年米軍装甲車に轢(ひ)き殺された二人の少女ヒョスンとミソンを追悼する平和公園造成運動、DMZ(南北の軍事境界線)を越える女性たちの「平和の歩み」など、さまざまに展開されてきた。

第2空港阻止へハンスト

 済州第2空港に反対する闘いを詳しく紹介したい。

 空港建設に向けては現在、基本計画が策定された段階。次にこの計画が告示され、実施設計の委託、土地の補償へと進む。基本計画の告示により法的効力が生じるのを防ぐため、10〜11月ハンガーストライキを闘った。

 賛成派は「地域経済の活性化」「既存空港の滑走路が飽和状態」を理由にあげる。反対する人びとは「住民の意見が集約されていない」「既存空港で十分」と見る。フランスの調査機関が「既存空港を活用すべきで、新空港は必要ない」とする報告書を出したが、国土交通部(=国土交通省)は、この報告書を「廃棄した」とウソをついて5年間隠し続けた。

 渡り鳥が飛行機と衝突する危険性や絶滅危惧種が発見されていること、洞窟がたくさんあるのに地盤調査が行われていないことなども指摘されている。だが、「開発すればお金が儲かる」という宣伝に多くの人がだまされ、地元の島民を排除。これは平和的でも民主主義的でもない。

 10月18日、中央官庁が集まる世宗(セジョン)市の環境部(=環境省)前でハンストを始めた。「3日もすれば空腹を忘れる」という人もいたが、若いせいか空腹はずっとつらかった。食べないことが目的ではなく、環境部長官と面談し、記者会見し、大きくアピールするためのハンストだ。

 強く要求したのは、環境影響紛争調整協議会の設置と戦略環境アセス書の差し戻し。島民の手書きの要請書104通も渡そうとしたが、受け取らない。大きな壁を感じた。

 しかし、済州KBSの生放送インタビューが実現し、当初扱わなかった進歩派メディアも一生懸命ドアをノックしてアプローチする中で取り上げてくれるようになった。

 環境部が国土交通部に条件付き同意をする直前、保留をかちとった。長官には会えなかったが、政策補佐官に会えた。補佐官は「ハンストするから面談が難しくなった」と言う。「ハンストしなければ長官は会ったのか」と聞き返したが、返事はなかった。

 私は「韓国は対話が成立しない社会だ」と感じた。セウォル号沈没事件のとき、船長は「じっとしていろ」と指示し、大ぜいの若者が死んだ。「じっとしろ」「じっと死ね」という状態は今も続いていると悟った。

反対運動に共感広がる

 1948年の四・三事件では公式発表でも3万人が虐殺された。それは70年前の話ではなく現在も進行中だ。なぜか。反対意見に聞く耳を持たない。第2空港問題の核心は、四・三事件の延長上にある。中央政府の言うことに地方自治体はそのまま従え。地元の意見は無視する。当時も今も何も変わっていない。

 済州道知事の元喜竜(ウォンヒリョン)は、抗議する人たちを踏みつけて道庁に入っていく。対話に応じたことは一度もない。

 中央政府の指示で開発を進める。その裏には資本の論理がある。血税5兆ウォン(約5千億円)を投じて無条件で事業を押しつける。空軍基地が出来ていろんな問題が起きても誰も責任をとらない。

 私に続いて、ソウルの光化門(クァンファムン)でパク・チャンシクさんがハンストを開始した。市民団体が集まって記者会見をもった。第2空港反対の運動は多くの人の共感を得つつある。

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