2019年12月13日 1604号

【議会を変える 市民と変える 京都府向日市議杉谷伸夫 生活保護ケースワーカーの事件から】

 今年6月に向日(むこう)市で、生活保護利用者の男性(容疑者)が女性を殴って死なせてしまい、男性を担当していた若手の生活保護ケースワーカー(CW)が、女性の遺体を隠すことに協力させられた事件が起きました。加害者の男性は過去に2回も同様の事件を起こしており、若手CWに対して異常で執拗な不当要求を毎日くり返し、脅迫や暴力によって服従させていたことが明らかになっています。しかも、このCWは、非常に熱心だと誰もが口をそろえるまじめなCWでした。

 市民から「若い職員に任せっぱなしにしてたんやろ。その職員も被害者や」と、市の責任を問う声を多く聞きました。私は事件が、向日市の生活保護行政の課題が現れたものだと考え、議員としてその解明に取り組もうと9月の市議会で取り上げ、CWの刑事裁判の傍聴をはじめ調査を続けています。

 9月議会で、私の質問に対し副市長は市職員を守れなかったことへの後悔と事件を防げなかった反省を述べ、(1)事件の検証委員会に外部専門家の第三者委員に入ってもらうこと(2)今回のような不当要求に対する対応マニュアルを作成することを約束しました。

 10月にCWの刑事裁判の公判があり、この若手職員の学生時代の恩師や友人、そして各地のCWが多数傍聴にかけつけました。

 CWの皆さんが向日市の職場の対応について「あり得ない」と共通して指摘したのは、若手CWに対する毎日2時間もの長電話による執拗な要求などが繰り返されていたのに、異常な事態を異常ととらえず、漫然と放置していたことです。組織として責任をもった対応ができず個人まかせで放置していたこと、その原因究明が必要です。

 また、業務に関する専門性が不足しているのではないかとの指摘もありました。生活保護CWの仕事は、高齢や病気、障がい、失業その他様々な要因から経済的に困っている人に寄り添い、どうすればよいかを一緒に考え、その人がしっかりと生活が送れるよう支援することです。人の生活に深く関わり、人生を左右する重要で難しい仕事です。しかし向日市では(そして多くの市町村でも)CWの多くが3年程度で異動してしまい、専門性が育たず経験が蓄積されません。

 11月26日から今年最後の市議会定例会が始まりました。刑事事件の裁判も、検証委員会も途中なので本格的な議論は少し先になりますが、見えてきた市の生活保護の運営体制の課題について取り上げ、議論を始めます。
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