2019年12月13日 1604号

【福島甲状腺被ばくの真相を明らかに 市民と科学者の協働で講演会 京都・市民放射能測定所】

 京都・市民放射能測定所は12月1日、「福島原発事故による甲状腺被ばくの真相を明らかにする」をテーマに、市民と科学者の協働の取り組みとして秋の講演会を開催した。

 冒頭、京都測定所の佐藤和利事務局長が「事故後8年たっても汚染は消えない! 測定結果から見えること」を報告。食品、衣類、土壌などの測定結果から放射能汚染の現実と防護の拠点としての市民測定所の役割を語った。楠本泰一郎副代表は、9月に導入した空間線量を測るホット・スポット・ファインダーのお披露目とあわせて、線量データを蓄積するため、原発周辺やそれぞれの居住地域での定点測定を呼びかけた。

 メイン企画、山本英彦さん(小児科医・医療問題研究会)の講演に移る。9月に国際的医学雑誌メディシンに掲載された論文「福島原発事故後の甲状腺がん検出率と外部被ばく線量率との関係」を紹介し、「甲状腺がんと放射線被ばくの間の関連は認められない」とする福島県県民健康調査甲状腺検査評価部会まとめを全面的に批判。(1)福島県59市町村における甲状腺がんの検出率と放射線量率は統計的に有意な用量反応関係を示した(2)福島原発事故による放射線被ばくは、小児及び青年の甲状腺がんと正の関係にある(3)論文は原発事故と甲状腺がん発生との因果関係を明らかにしたこれまでの研究を裏付けるものだ、と結論づけた。

 討論では、加藤聡子(としこ)さん(元京都聖母女学院短大教授)が「2巡目検査の最終結果が2016年に利用可能となったため、1巡目と2巡目を合わせ、被ばく後6年で解析すると、被ばく線量に比例して小児甲状腺がんの発見率に地域差が見られる」と説明。「事故からの時間経過によってがん発生が増えている。地域被ばく線量と関係があるため、福島甲状腺がん多発は被曝による可能性がきわめて高い」と報告した。

 参加者の活発な議論を受け、宗川吉汪(そうかわよしひろ)さん(日本科学者会議京都支部)が「福島原発事故による甲状腺被ばくの真相を明らかにする会」の設立を呼びかけた。会の目的は「甲状腺がんの原因が放射線被ばくであることを2巡目検査についての福島県立医大報告に基づいて明らかにする」こと。具体的には、(1)検証委員会を設けて医大報告を検証する(2)福島県立医大、県民健康調査検討委員会、各種医療団体に対して医大報告の検証と結果報告を要請する(3)講演会・広報誌などによる宣伝活動を行う、ことだ。

12・12賠償訴訟傍聴を

 測定所の設立から7年。地道な測定活動と、「低線量被ばくによる健康被害」を社会的に明らかにする活動を続けてきた。市民と科学者の協働をさらに広げ、福島甲状腺がんが被ばくによる発症であると国や福島県、東京電力に認めさせることを突破口にして、原発被害者への全面的な救済にむすびつけたい。

 なお、避難者スタッフも原告である原発賠償京都訴訟の控訴審第5回期日が12月12日(木)午後2時30分に大阪高裁で開廷する。みなさまの傍聴支援をお願いします。

 パンフレット「被ばくは低線量でも危険」(定価500円)。申し込みは http://nukecheck.namaste.jp/

(京都・市民放射能測定所 代表奥森祥陽)

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