2019年12月20日 1605号

【性暴力犯罪裁けない現刑法 女性の人権、尊厳を守る 国際的な視点で刑法改正を】

性暴力がまかり通る社会

 「意味わからん」と、女性たちの怒りが渦巻いています。11月21日、OPEN(平和と平等を拓く女たちの絆)も参加している「おんな・こどもをなめんなよ!の会」主催の講演会が行われました。性暴力や女性の人権問題に取り組む雪田樹理弁護士が「性暴力犯罪がまっとうに裁かれる刑法改正を」のテーマで講演。

 最近の性暴力に対する無罪判決が報告されました。「こんなことがまかり通っていていいのか」と加害者に対する怒りと司法への不信を抱かざるを得ません。一例として、飲み会の場でレイプされた女性の事件があります。判決では、被害者女性が「飲酒酩酊して、抵抗することが著しく困難な状態」であったことは認められるが、「女性から明確な拒絶の意思が示されていないことから、女性が性交を許容していると被告人(男性)が誤信してしまう状況にあった」ので、「犯罪の証明」がなく「無罪」というもの。酒を飲ませて酔わせてレイプしても、「嫌がっているようには見えなかった」と言えば罪にはならない。これが今の刑法なのです。

今すぐ刑法改正を

 2017年に改正された刑法の中で、強制性交等罪が成立するには、「暴行脅迫」と「抗拒不能」が認められ、被告人がその状態を認識しており故意に行ったことを立証しなければなりません。

 性暴力の背景には、「男性の性欲はコントロールできないもの」だから、被害を回避しなかったのは女性側に「すき」=落ち度があったからで、嫌なら「死に物狂いで抵抗するはず」という誤った考えや偏見があります。はっきりと抵抗しなければ「同意」があったとされますが、加害者が上司や教員、親などの場合、「反対意思」を言うのはむつかしく、「暴行脅迫」と「抗拒不能」の要件は被害者を救うことになっていません。

 2020年には、「刑法の見直し」が求められており、市民団体からは、被害の実態に即して「同意のない性的接触罪」を盛り込んだ改正案が出されています。来年の国会では、市民と野党共闘の力で、こうした当然の改正案を成立させなければなりません。

国際的な水準で

 すでに国連は2009年に「女性に対する暴力に関する立法ハンドブック」を出し、すべての国連加盟国は2015年までに国内法を整備するよう勧告されています。

 「性暴力は、性的自己決定権を侵害するもの」で、「強制力と暴力を用いて行われるという要件をなくし」「明確で自発的な同意の存在と立証が必要」というのが国際的な基準です。ヨーロッパ各国の刑法はこの観点で改正されてきています。日本の刑法は、国際的な水準からはるかに立ち遅れているのです。

 また、今年6月に採択されたILO(国際労働機関)「仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約」(190号条約)では、ジェンダーに基づく暴力とハラスメントを禁止する国内法の制定が明記されています。この条約の批准も求められています。

声上げ立ち上がる

 性暴力の被害者が声を上げ始め、支援者の輪が広がっています。毎月11日に行われている性暴力根絶をめざすフラワーデモは、全国27か所以上に広がっています。「社会を変えたい」という思いが集まって、ここまで広がってきました。ジェンダー平等、セクハラNOの声を力に刑法改正を実現させましょう。

(OPEN〈平和と平等を拓く女たちの絆〉 山本よし子)

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