2019年12月20日 1605号

【「月桃の花」歌舞団 ガマ人間あらわる 茨城公演 声を出すことから始まる】

「何度も涙」の声 福島と茨城結ぶ

 11月24日の茨城公演は140名の参加者で成功しました。今回の特徴は2つ。福島と茨城を結んだ公演になったこと。そして、観客席での感想交流会でたくさんの意見が出されたことです。

 茨城公演には福島から6名、栃木からも2名参加がありました。冒頭のあいさつは子ども脱被ばく裁判の原告佐藤美香さん。原発事故後に子どもたちだけを避難させざるをえなかったことなどが思いをこめて訴えられ、公演後の感想でも、たくさんの方々が「福島からの訴えが良かった」と言っていました。

 感想交流会では、「何度も自然に涙が出てしまいました。あきらめずに声を出していきたい」「(茨城でも)1歳の子どもをかかえて母乳をあげられなかったことを思い出した」など、自分の状況を語った意見も。茨城の方々にとって、東海第2原発再稼働が迫る状況で、命の問題、福島の問題が抜き差しならぬこととなっていると感じました。

たくさんの出会いが

 水戸出身の私ですが、正直、故郷に良い印象をもっていませんでした。水戸学という尊王攘夷の考えが強い地域だと感じていたからです。でも今回、地域を回っていろんな方々の活動がわかりました。重度障がい者が地域で自立して生きていけるように支援している施設、若者の就労をサポートしている施設、権利を守るためにストを打っている労働組合など、たくさんの素敵な人たちに出会いました。「水戸もいいところじゃん」

 ということは、今、住んでいる川崎でも、きっと地域でいろいろな出会いができるはず。自分が知らないだけなんだ、見ていないだけなんだと思いました。

 公演後の歌舞団カフェには、エキストラで出演した方や最初に茨城公演をやりたいと言った方も参加。「今回の公演では、観客が50歳以上の方々が多かった、もっと若い人に観てもらえるようにしよう」「この公演はミュージカルだけに終わらせるのはもったいない。もっと広げていけたら」という意見が出ました。

 今後は、2部構成の歌舞団カフェをしていきたい。1部は福島の方を呼んで福島のことをテーマに、2部は労働のことをテーマにして、劇を入れたり歌を入れたりしながら、来た人が楽しかったと思える歌舞団カフェをしてみたい―という意見でまとまりました。

 茨城で作った関係を丁寧につないでいきながら、今後も『ガマ人間』を全国に広げていきたいと思います。

(「月桃の花」歌舞団・神子幸恵)

演じる側も観る側も一つ 公演に新たな命

 茨城公演を終えて私が感じたこと。それは、本番が始まる前にあいさつをした佐藤美香さんの話から始まります。

 彼女は、震災後に子どもたちが体調を崩し、不安と絶望の中、愛おしい子どもたちのためにある決断をしました。子どもたちを保養を行っている遠い場所へ避難させることです。しかし、仕事を休むこともできず、自分1人福島に残る道を選択しました。

 本来なら子どものそばにいたかったことでしょう。しかし国は「自主避難」という形で被災した多くの国民を見放しました。その結果、親と子は引き裂かれたのです。

 ほどなく彼女は、子ども脱被ばく裁判に関わり、今も、声を上げ続けています。

 どうして、彼女は自身の身体を酷使して、がんばれるのか!それは国も県も市も守ってはくれないからです。本来ならば国が国民を守らなくてはいけないはず…。子どもは宝≠サれだけを心の糧にして、がんばって生きています。

 この話は会場のお客様の心に深く深く響いたんだと思います。それだけではなく私たちキャスト一人一人にも影響を与えてくれました。演じる側も、観る側も一体となって、公演に新たな命が吹き込まれたかのようでした。

 フィナーレは全員で『ダイレクト』。地元茨城から出演してくれた方はもちろん、協力してくださった方々や合唱団のみなさん、観客のみなさんとで一つとなり、ホール全体に響きわたる歌声でした。今までにないくらい心に沁みわたり、私自身その歌声に涙が溢れてとまりませんでした。

声に出していいんだ

 私は、初めて『ガマ人間あらわる』を観たときは辛くて途中退席しました。しかし、あれから3年を経て、たくさんの方との出会いがありました。気づいたことは、痛み、辛さを我慢しなくていいんだ、嫌なことは嫌だって声に出していいんだ!ってことです。だから出会えたすべての方に感謝の気持ちでいっぱいです。これからも、たくさんの活動に全力投球でがんばれます。

 次回公演先はまだ未定ですが、私は自分の故郷、福島でぜひ公演できたらと思っています。福島は、まだまだ「声を上げることは恥ずべきこと」と思う方ばかりです。

 だからこそ私は火付け役になりたい、いえ、ならなくてはならないと強く思わずにはいられません。

(「月桃の花」福島歌舞団・おおふじけいこ)



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