2019年12月27日 1606号

【「未来を担う子らのこと よく考えてほしい」/南相馬・避難20mSv基準撤回訴訟 原告本人尋問】

 福島県南相馬市の特定避難勧奨地点が年間被ばく線量20mSv以下になったとして指定解除されたのは違法と訴えている「南相馬・避難20mSv基準撤回訴訟」の原告本人尋問が12月11日、東京地裁で行われた。

 この日、原告らは朝4時前に貸し切りバスで福島を出発。開廷に先立つ地裁前集会には支援者を含め約100人が駆けつけ、傍聴席も埋まった。原告6人が証言台に立った。

 原告団長の菅野秀一さんは、高倉(たかのくら)行政区(74世帯)の区長を務めるとともに、特定避難勧奨地点がある8行政区の取りまとめを行ってきた。「勧奨地点を指定した時も解除した時も、住民の声を聴かず勝手にやった」と怒る。大谷(おおがい)行政区長の藤原保正さんは「低線量被ばくは恐ろしい。できるだけ被ばくさせないよう努めるのが区長の役割。土壌を測ると96世帯中94世帯で4万Bqを超えた。原発労働者の被ばく限度が5mSvとされているのに、20mで子どもを戻らせるとはとんでもない」。

 現地では「ふくいち周辺環境放射線モニタリングプロジェクト」が測定・調査を継続してきた。同プロジェクトの一員で原告の平田安子さんは「屋内と屋外の空間線量率が変わらなくなっている。国が使う遮蔽係数は0・4だが、実態は0・81。現在も相当多くの地点で1時間あたり1μSvを超える」と訴えた。

 被告・国側は、低線量・内部被ばくに触れず、20mSv基準の妥当性が争点となっているのに数値評価を一切避けた。反対尋問では「区長と言っても条例にある通り事務的な仕事が役割。住民の代表ではないだろう」「相当数の世帯が帰還しているではないか」とケチ付けに専念。原告側から「条例は行政嘱託員に関するもの。行政区長の役割を定めたものではない」「帰還世帯も高齢者が主で、子育て世代は帰っていない」と反論され、黙り込んだ。

 終了後、菅野団長は「原発事故対応が20mSv基準という悪しき先例を残してはならない。被ばく限度の世界基準=年間1mSvを基準にしていくため、最後まで支援をよろしく」と語った。次回4月24日に結審し、判決は東京オリンピック後となる見通し。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS