2020年01月03・10日 1607号

【沖縄・辺野古/国際環境団体が大浦湾破壊に警鐘/くい打ち工事を国際連帯で阻止へ】

 国際自然保護連合(IUCN)種の保存委員会海牛目類専門家グループが2019年9月末に来日した。私たちジュゴン保護キャンペーンセンター(SDCC)などの呼びかけに応えたものだ。

 沖縄ジュゴンBの死亡、A・Cの行方不明で、日本のジュゴンの危機について環境省(オブザーバー参加)、沖縄県(ペーパー提出、欠席)、NGOとのワークショップが開かれた。ワークショップでは、日本のジュゴンが絶滅の一歩手前であり、南西諸島全体でジュゴンの確認調査をすることが議論された。また、基地建設によるジュゴンの餌場、海草藻場への影響を懸念する意見が表明された。

 10月には、世界で最も重要な海域「ホープスポット」(希望の海)110か所の一つに、辺野古大浦湾が国内で初めて選ばれた。「ホープスポット」はアメリカを拠点にするNGO「ミッション・ブルー」が認定するもので、日本自然保護協会、SDCCなど11団体の取り組みの成果だ。これらの国際的な環境団体は、生物多様性豊かな辺野古大浦湾を破壊する埋め立て工事に警鐘を鳴らしているのだ。

工事強行ほのめかす

 12月14日、辺野古の海に土砂が投入されて1年経った。しかし、辺野古の浅瀬に投入された土砂量は全体計画量の1%にすぎない(10月末時点、沖縄県発表)。サンゴや海草藻場への影響は大きいが、闘いの成果ではある。

 防衛省は大浦湾西岸海底にある軟弱地盤の「改良工事」として、7・7万本のくい打ち工事を準備している。19年9月、防衛省は「技術検討会」(委員長は旧運輸省出身)を開催。第1回検討会では「設計に関する地質調査は妥当」(9/6共同通信)とし、第2回検討会では「(最大1・3mの地盤沈下でも)問題なく工事ができる」(12/12朝日)と議論していることが報道された。

 1月にも防衛省は沖縄県に設計変更申請を行う。国会答弁では「県と事前協議する」(防衛省整備計画局長、19年3/5参院予算委員会)としているが、政府交渉(11/29)で私たちの「県の指導に従うか」との追及に、「事前協議していないので分からない」と工事強行をほのめかしている。国会での追及と全国各地での闘いが重要だ。

現地と世界を結ぶ

 IUCN専門家グループの来日は、日本政府に大きな影響を与えている。防衛省は行方不明のジュゴンA・Cの調査範囲を沖縄本島、古宇利(こうり)島周辺に広げることを決めている。環境省は交渉で「今年度予算で渡名喜島、波照間(はてるま)島、西表(いりおもて)島でのジュゴンの食み跡を調査する」と約束した。20年にわたる闘いは「辺野古が唯一の移設先ではダメ」と本土の世論を変えてきている。

 米国連邦裁判所でのジュゴン訴訟も2020年で17年となる。19年1月から控訴審で書面の審理中だ。公開審理を実現するために、今回のIUCN海牛目類専門家の勧告や「ホープスポット」への登録、国防総省が沖縄県との協議を拒否している事実を裁判所に提出する準備を進めている。1月には米国NGOとともに米国政府の海洋ほ乳類委員会や国家歴史保存諮問委員会に働きかける。

 埋め立て阻止の闘いは米国連邦議会を動かしている。私たちをふくむ日米NGO33団体は、2020会計年度国防権限法案の「インド太平洋地域における米軍分散配置の報告」項目を支持する声明を連邦議会に提出し、辺野古新基地建設の再検証を求めてきた。国防権限法には再検証を求める項目は盛り込まれなかったが、現行計画の進捗を180日以内に議会報告することを義務付けた。

 防衛省の設計変更申請を認めない沖縄県を支える闘いでくい打ち工事を阻止しよう。(ジュゴン保護キャンペーンセンター共同代表・蜷川義章)

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS