2020年01月03・10日 1607号

【再稼働は政府の思い通り進まず 老朽原発の運転阻止で全廃へ】

 安倍政権は、2020年夏のオリンピックを「復興五輪」と銘打って福島原発事故そのものを過去のものにし、原発再稼働への弾みをつけようと企んでいる。だが、再稼働の状況は政権の思い通りに進んではいない。

容易でない再稼働

 これまでに原子力規制委員会の新規制基準に「適合」とされたのは9原発16基。一見、再稼働への動きは順調に進んでいるように見える。だが、実際に再稼働しているのは5原発9基(うち2基は停止中)にとどまる(表参照)。



 再稼働できていない原発のうち、高浜1・2号機、美浜3号機(関西電力)は老朽原発(稼働後40年超)で安全対策工事中である上に、施工業者を巻き込んだ汚職が関電幹部から福井県職員にまで及んでいたことが明らかとなり、簡単に再稼働できる状況にはない。柏崎刈羽(東京電力)6・7号機は新潟県の検証委員会の検証が終わるまでは事実上凍結≠ウれたままだ。

危険な東海第二

 18年11月に「適合」認定された日本原電東海第二の再稼働に対しては、さまざまな懸念が表明されている。(1)運転開始からまもなく40年を迎える老朽原発であること(2)原電には経済的基盤がなく、安全対策費も大手電力から支援を受けなければ準備できないこと(3)福島第一と同じ沸騰水型で、事故で炉心溶融が発生した場合、真下に水深1メートルの水を張ることになっているが、高温の炉心が落下した場合、水蒸気爆発の危険があること(4)避難計画に実効性がないこと―などである。

 原電は、東海第二の30`圏の6市村と原子力安全協定を結んでおり、再稼働に当たっては事前同意を得る必要がある。最も多くの人口を抱える水戸市の高橋市長は「万単位で市民の意見を聞いて、再稼働の是非を判断したい」と大規模なアンケートを実施する考えを示している。市民団体「いばらき原発県民投票の会」は、再稼働の是非を問う県民投票の実現をめざして1月から条例制定を求める署名活動を開始する。

被災した女川も「適合」

 11月27日、女川(おながわ)原発2号機(東北電力)が新規制基準に「適合」すると認められた。今後、パブリックコメントを経て、正式決定される。

 女川原発は、東日本大震災ではM9・0の本震だけでなくM7・2の余震でも想定を上回る揺れに見舞われた。2号機の原子炉建屋は壁に1120か所のひび割れが見つかった。また東北電力は震災後、基準地震動を1000ガルに引き上げた。当初の基準地震動270ガルだったのを大きな地震があるたびに引き上げてきた。だが、原子炉建屋本体は元のままでせいぜい耐震補強をしただけだ。

 また、宮城県議会は「女川原発2号機の安全性に関する検討会」を継続して開催。新規制基準が世界標準になっているコアキャッチャー(炉心溶融物保持装置)の設置を求めておらず水蒸気爆発の危険性がある、避難計画がまったく審査されていないなどの問題点を指摘している。

 11月12日には、石巻市民17人が広域避難計画には実効性がないとして、石巻市と宮城県を相手に再稼働への地元同意差し止めを求める仮処分を仙台地裁に申し立てた。

2020年 次々運転停止

 現在稼働中の原発も、20年は次々と運転停止に追い込まれる。原子力規制委が4月24日、「特定重大事故等対処施設」(特重施設=「テロ対策施設」)が期限までに完成しなければ、運転停止を命じることを決めたからだ。

 特重施設は13年7月施行の新規制基準で義務づけられたもので、当初の設置基準では施行から5年(18年7月)だったが、規制委の審査が長引いたことから「原発本体の工事計画の認可から5年」に変更された。

 その期限が、一番早い川内(せんだい)2号機(九州電力)で20年5月に来る。停止見込み期間は、工事が計画どおりに進んだとしても約1年間。その後、8月に高浜3号機、10月に高浜4号機、翌21年3月に伊方3号機(四国電力)、22年8月に大飯(おおい)3・4号機(関電)と続く。いずれも約1年間は運転停止となる。

 *   *   *

 このように、原発再稼働は推進派の思惑どおりには進んでいない。新規建設が難しい状況の中で、老朽原発の再稼働を許さなければ、すべての原発は順次運転停止していかざるを得ない。全原発廃炉は実現できる。老朽原発の危険性を広く訴え、再稼働反対の世論をいっそう大きくしていこう。また、立地および周辺自治体での市民の取り組みを支援し、同意を出させない動きを強めることも重要だ。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS