2020年01月03・10日 1607号

【ドクター林のなんでも診察室 全公立・公的病院の3分の1(!)を再編】

 9月26日、厚労省は突然、再編・統合を促進すべきとする公立(自治体立)・公的(日赤など)病院名を公表しました。その数、なんと全公立・公的病院の約3分の1にあたる424病院です。すでに、2017年度までの10年間で、2万1千床、全体の1割、94の病院が減らされている上にこの削減です。

 厚労省が再編・統合する病院を選ぶ基準は、この議論をした国会で2014年当時の厚労相は、「確かに機械的にやれば北海道は(公立・公的病院は)札幌と旭川だけになってしまう」と認めた、ひどいものです。

 再編・統合の理由である、多すぎるとされる急性期病院は千人当たり13・2ベッド(15年)です。国際的に多いかに見えるのですが、日本だけが精神病院と回復期リハビリを含んでいます。それらを引くとドイツより下、フランスと同程度となります。さらに、日本では、長期居住型の施設が65歳以上人口千人当たりで独仏英などの5〜6割しかありません。結局、急性期病院の再編・統合は「在宅医療」をいっそう家族に押しつけるのです。さらに、ターゲットには救急や周産期(赤ちゃん対象)まで含まれ、要は儲からない部門の切り捨てです。

 この強引な方針の背景に19年5月経済財政諮問会議での民間議員の「補助金活用の病床削減、診療報酬の大幅な見直しによる病床機能の転換を進めよ」という指摘があります。この再編・統合を待ち受けるのが病院資本です。当然、当該病院の立地地域の反発は強く、全国市長会や多くの知事も批判しています。

 今回の問題を考える上で、医療の基本的指標が重要です。日本の医療費全体は主要7か国(G7)中5位。他方、医療費に占める薬剤比率は18・6%でトップです。世界に先駆けて手を抜いて薬を急いで認可し、不当に高い料金をつけるのが先月法制化された医薬品医療機器等法です。その先駆例が副作用や「耐性」で大問題の抗インフルエンザ薬ゾフルーザの認可です。

 薬に加え、千人当たりCTとMRIは対百万人それぞれ231と112でアメリカに次ぎ2位、イギリスの2・2倍。薬と医療機器の巨大企業が医療費を食い物にしているのが明確です。

 反面、医師数は千人当たり2・4人とG7中で最低、イギリスより2割少なくドイツの約半分です。将来の医師数を決める医学部卒業生はOECD(経済協力開発機構)35か国中、少ない方から2番目です。

 公立・公的病院統廃合問題は、病院、医療内容、医療従事者の問題に多くの市民の目を向けさせています。公立病院の拡大強化、医師など医療従事者の増員、不要で危ない薬や高額な医療機器の制限と一体での患者負担なし=無償化のために医療費全体の増額が求められています。

   (筆者は、小児科医)
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