2020年01月03・10日 1607号

【福島原発かながわ訴訟 控訴審始まる 村田弘原告団長が意見陳述 将来世代に悔い残さぬ判断を 被害は途切れることなく続いている】

 福島原発かながわ訴訟の控訴審が12月20日、スタートした。東京高裁前には180人の支援者が集まり、歩道の両側に赤と青の横断幕を広げながら『民衆の歌』を合唱して原告団・弁護団の入廷を励ます。傍聴券交付所に長蛇の列ができ、抽選倍率は3倍を大きく超えた。

 意見陳述に立ったのは村田弘原告団長。「震災関連の自殺者は今年に入って12人、2011年以降115人に達する。子どもたちの甲状腺がんは231人。汚染水は貯留上限に迫り、フレコンバッグは野積みされたまま。事故は終わっていない。被害も途切れることなく続いている」と訴え、「病や経済的困窮で国家公務員宿舎を出ることができない世帯に福島県は損害金請求の通知を毎月送り、帰還困難区域からの避難者への住宅提供も打ち切ろうとしている。帰還か『自立』かの二者択一を迫り、かさぶたを引きはがして塩を擦り込む非情な政策だ」と怒りを込めた。

 さらに、群馬訴訟控訴審での国側主張「区域外避難者の損害発生を認めることは我が国の国土に対する不当な評価となる」を取り上げ、こうした暴論がまかり通るのは「放射線被害と避難の権利に対する司法の明確な判断が示されていないからだ」とクギを刺し、「被害の実相に見合った賠償により、ズタズタに切り裂かれた人間としての尊厳を回復したい。避難者の心情を汲み取り、将来世代に悔いを残さない判断を」と求めた。

 原告弁護団が責任論・損害論に関し意見陳述したあと、被告・国側は延々40分にわたって「(国の機関である地震調査研究推進本部の津波予測には)客観的合理的根拠がなかった」とする主張を展開。一審判決の「国の責任」認定を覆そうと躍起になっている姿があらわになった。

 報告集会には、神奈川はもとより福島・群馬・千葉・東京・愛知・京都などの集団訴訟の原告や支援者も多数参加した。小賀坂徹弁護士は一審判決で賠償水準が低く抑えられた背景として低線量被ばくへの無理解を指摘。「低線量被ばくの健康影響については科学的知見をもって、しつこく主張・立証したと自負しているが、横浜地裁は逃げた。高裁ではここをしっかりと判断させたい」と語った。

 かながわ訴訟原告団と支援する会は翌21日、東京国際フォーラムで開かれた「ふくしま大交流フェスタ2019」で住宅打ち切りに反対するチラシを配布。内堀雅雄知事が元プロ野球選手を担ぎ出して復興オリンピックを強調したのに対し、「住宅打ち切り撤回」のプラカードをかざして抗議した。

 次回控訴審は3月13日。



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