七月十日、フィリピン・マニラ首都圏ケソン市パヤタスのごみ集積場でごみの山が崩壊し、多くの住民が生き埋めとなった。すでに分かっているだけで死者は二百人をこす。地元では、二千人が埋まっているとの推定もあり、犠牲者の正確な数は不明なままだ。
ごみ山崩壊の悲劇は改めて、フィリピン社会が抱える貧困の問題をまざまざと示した。パヤタス集積場内に家を建て、暮らしている人は三千人にものぼる。そのほとんどが、ごみの中から換金できるものを捜し出し生活の糧とする“スカベンジャー”と言われる人たちだ。マニラ市にあった集積場「スモーキーマウンテン」が閉鎖されたため、パヤタスに移り住んだ人も多い。
フィリピンの失業率は政府発表でさえ一四%。人口の一〇%に当たる七百万人は仕事を求めて海外に出ている。この人たちや不安定雇用層を加えると、失業率は実に三〇%に達する。
国家経済開発庁が発表した六人家族の最低生活費は一日四百七十ペソ(約千二百二十円)。しかし、政府が定めた最低賃金は二百五十ペソ(約六百五十円)だ。人口の七〇%の人々が貧困線以下の生活を余儀なくさせられている。
“スカベンジャー”としての暮らしはこうした貧困の象徴であり、“パヤタスの悲劇”は雇用の確保や住宅の提供を怠ってきた政府の無策が生み出したものだ。
損害賠償求め提訴
実は、パヤタスのごみ集積場について市議会はこれまでに二回、閉鎖決議を行っているが、実行されていない。集積場には一日七百台のトラックがごみを捨てにくるが、一台につき五百ペソ(約千三百円)の金が法的根拠もなく徴収される。集金を担当しているのは市長の息子との報道もある。こうした利権構造が、崩壊事故を契機に明るみに出された。徴収された金がパヤタスの住民のために使われていれば、事故防止も可能だったはずだ。
八月初め、遺族十数名は市当局などを相手に、「被害は行政の無策の結果」として損害賠償を求めて提訴した。住民を支援するフィリピン・キリスト教団のセサール・サントヨさんは「提訴は被害者の救済だけでなく、貧困問題の解決をめざす取り組みでもある。被害者や裁判への援助とともに、フィリピン政府による問題の隠ぺいを許さぬように、日本のみなさんからも働きかけてほしい」と呼びかけている。