「自衛隊はいやだけど、大規模災害が起こったら、やっぱり自衛隊の組織力を人命救助に活用しなくっちゃ」と考えてる人は意外と多いのではあるまいか。
自衛隊は人殺しの組織
だが、自衛隊はどこまで行っても人殺しの組織であって、人命救助のための組織ではない。そのことは、阪神大震災の経験からも明らかになっている。
「神奈川防災を考える会」の調査によると、阪神大震災の時、消防レスキュー隊は七千五百人で千三百八十七人を救助したという。つまり消防レスキュー隊は五・四人で一人を救助した。これに対して、自衛隊は一人救助するのに百人を必要としたという。
いくら毎日訓練をしているといっても、それはあくまで戦争の訓練であり、人殺しの訓練なのだ。また輸送手段や器材を持っているといっても、武器や戦争用器材を他の目的に転用するにすぎない。
災害時の人命救助を最優先に考えるなら、充実させねばならないのは消防レスキュー隊だ。消防レスキュー隊は最も純粋な人命救助組織であり、救助工作車・ファイバースコープ・油圧式救助器具など、人命救助を目的とした資材や器材を備えている。また、建物の下敷きになった被害者を救出する間の接し方などについても日常的に訓練を受けている。
そもそも自衛隊が守るとしているのは「国」であり、「公共の秩序」である(自衛隊法三条)。それに対して、消防レスキュー隊が属する地方自治体は「住民及び滞在者の安全の保持」(地方自治法二条)を目的としている。
大切な地域での共生関係
大規模災害に備えた救助組織の充実は必要だ。だが、それ以上に必要なのは、いざという時にお互いに助け合える、地域における「共に生きる」関係づくりだ。とくに、大規模災害の不安を利用して、外国人敵視の排外主義を煽る動きがある時、在日外国人と共に平和な地域をつくっていく取り組みの重要性はいっそう高まっている。