2001年08月31日発行703号

【石原都政が今年も「ビッグレスキュー」 強まる市民の戦争動員訓練】

高校生が自衛隊と訓練

 九月一日に「防災」を名目に行なわれる自衛隊の治安出動訓練−東京都総合防災訓練(ビッグレスキュー東京二〇〇一〜首都を救え〜)の概要が明らかになった。今年度はボランティアや医療機関、高校生などを動員して市民生活を軍事行動に協力させる体制の確立を狙っている。

 発表された実施細目によれば、今年は東京西部の多摩地区を中心に七会場で実動訓練が行なわれる(別表参照)

 昨年の都心を中心とした十会場に比べて規模が圧縮され、全体の訓練参加人数は二万五千人から一万七千人に、参加する自衛隊員も昨年の七千百人から二千人に減る。これは、「あれほどの(自衛隊の)訓練は必要ないという批判もいただいた」と都の担当者も認めるように、防災に名を借りた軍事演習が都民の批判を招いたからだ。

 しかし、見落としてはならない危険性は、軍事行動に一般市民の協力を取り付けようと狙っていることだ。都は昨年の訓練の実施報告書の中で課題として「住民参加型訓練も充実させ、より都民と一帯(ママ)となった訓練としていく必要」を指摘していた。

装甲車まで出動した昨年のビッグレスキュー
写真:我が物顔で都内の公道を走る自衛隊の装甲車

 これを受けて今回、都立南多摩高校では当初予定されていた始業式の日程を先送りしてまで、生徒全員が訓練に組み込まれることになった。在校生は当日、携帯電話かパソコンを使って学校に居場所と安否を連絡することを義務付けられる。すでに、「南高生としての誇り…に大いに期待」とボランティア参加をあおりたてる校長名の文書が生徒と保護者全員に渡された。応じた生徒は自衛隊と一緒に炊きだし訓練などに従事させられる。

 また、軍事行動には欠かすことのできない医療機関との協力も強化されている。病院からの動員は昨年の四か所・二十人から今年は十四か所・約三百人に増えた。昨年はなかった看護専門学校などの医療教育施設からも九校・百人以上が動員される。負傷者の搬送訓練などで、都内全域の病院を自衛隊が走り回ることになる。

 地元の自治会からの参加も調布市や立川市などで予定され、「市民参加」の名による戦争動員訓練になろうとしている。

訓練全体を統括する自衛隊

 一方で、自衛隊は訓練全体を統括・指揮する立場をより強めている。都は、今回のビッグレスキューの一環として七月十七、十八日の両日、「本部運営訓練」と称する図上の連携調整訓練を行なった。全体参加二千人のうち自衛隊員は千二百人。都の発表によれば、見学者五百人のうち現役自衛官が三百五十人を占めるという突出ぶりだ。こうした訓練方式は自衛隊が行なう指揮所演習をモデルにしており、事実、同時並行で行なわれた陸上自衛隊東部方面隊の防災指揮所演習との連携のもとで実施された。今や、都庁にある防災センターでは迷彩色の制服を着た自衛官らが連日歩き回っている有り様だ。

 さらに今年は横田基地など米軍施設を使っての訓練も行なわれる。石原知事は横田基地の返還を公約に掲げてきたが、その狙いは基地機能を使った軍事・治安活動の強化にあることが改めて浮き彫りとなった。

 「ビッグレスキュー」の狙いは、「防災」を名目に、自衛隊の活動に国民を従わせる戦争国家体制づくりにある。訓練への監視・抗議の行動を広げよう。

ホームページに戻る
Copyright FLAG of UNITY