2001年10月26日発行711号

【「解雇ルール」明確化進める小泉 4要件無力化し首切り自由へ】

首切りの歯止めなくす解雇基準の明確化

 小泉首相は十月十日、厚生労働省に対して、終身雇用を前提とした雇用制度を抜本的に見直すよう指示した。

 主な内容は、(1)二〜三年の期限付き雇用の対象職種の拡大と(2)解雇ルールの明確化だ。これらは、不安定雇用を増大させ、首切り自由社会を徹底するものとなる。

 重大なのは、解雇基準とルールの立法化への動きだ。すでに、経済財政諮問会議(議長・小泉首相)の改革先行プログラム中間とりまとめ(9/21)はその調査・検討を盛り込み、厚労省労働政策審議会の労働条件分科会は、はじめて「解雇ルール」の検討を開始している。

ハローワークで職探しをする失業者
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 現在、労働者の整理解雇は、整理解雇四要件で厳しく規制されている。(1)人員削減の必要性(2)希望退職の募集や配置転換など解雇回避努力(3)解雇者選定理由の合理性(4)労働者・労働組合に対する十分な説明協議というこの四要件は、判例に基づく。法律として明文化されていないものの、整理解雇に対する社会的な歯止めとなってきた。

 小泉内閣は、この四要件の無力化を狙っている。

 政府が主張する解雇基準明確化の必要性とは「解雇基準が不明確で解雇しづらいから、企業は採用を手控え、雇用が伸びない」というものだ。解雇の規制緩和であり、「まず解雇ありき」なのだ。

 日経連の奥田会長さえ「懸念するのは便乗するような形での解雇が連鎖的に発生することだ。解雇規制の緩和はもっともやってはいけないこと。便乗解雇を容易にするとともに、なにより経営者のモラルハザードを引き起こす」(8/2日経連経営トップセミナー)と危機感を語らざるをえない。

 解雇基準の明確化は「基準さえ満たせば、いつでも首を切れる」という社会を生み出し、大量失業に拍車をかける。

不安定雇用増やす有期雇用期間の緩和

 産業構造改革・雇用対策本部(本部長・小泉首相)は、九月二十日、有期雇用対象職種を今年度中に拡大する方針を決定した。

 従来、労働基準法では有期雇用期間の上限を一年としてきた。そして、一年の雇用契約の更新を繰り返すことによって、いわゆる正社員と同様に扱わせ解雇を規制してきた。

 政府は九八年の労基法改悪で、この上限を開発研究部門の労働者など一部職種に限って三年に延長した。更新の繰り返しによる正社員扱いを避け、解雇しやすくするためだ。

 適用範囲の拡大と有期雇用期間上限のいっそうの延長は、不安定雇用労働者を増やすことになる。

 解雇基準の明確化も有期雇用期間の延長も、正社員を不安定雇用労働者に置き換え、あるいは正社員の首切りを自由に行うためのものだ。

正社員化勝ち取ったカンタス航空争議

 今必要なのは、解雇に歯止めをかけ不安定雇用労働者の雇用と権利を守る労働者保護政策である。

 政府が不安定雇用労働者の増大へと誘導するなかで、九月十三日、不当解雇撤回を求めて裁判を闘ってきたカンタス航空客室乗務員労組は、十二名の解雇撤回の和解解決を勝ち取った。

 会社は契約社員であった客室乗務員に「五年間継続して雇い、さらに五年間更新される」「正社員にする」などと言いつつ、労働条件の大幅な切り下げに応じないとなると、「雇用契約満了」を口実に解雇した。

 同労組は三年を超える争議を闘い、東京高裁は今年六月、雇い止め無効と未払い賃金の支払いを命じた。今回の和解は、その判決を上回る正社員としての職場復帰だ。

 労働者使い捨ての典型のようなこの事件での完全勝利和解は、闘いの力で首切り自由に歯止めをかけることができることを示し、すべての労働者を励ましている。

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