十一月十八日、三重県海山(みやま)町で原発誘致の是非を問う住民投票が実施された。結果は、誘致賛成二千五百十二票に対して反対が五千二百十五票。投票総数の六七%、有権者の五九%が誘致に反対し、反対派の圧勝となった。
海山町では、九九年夏から誘致派住民が賛同署名を開始し、今年二月、海山町商工会が有権者の六四%・五千六百六名分の署名を添えて町議会に誘致決議の請願をした。これに対し、反対派住民も誘致反対決議を請願。議会は特別委員会を設置して審査を進めたが結論が出せず、市長が条例案を提出し住民投票の実施となった。
市長は誘致推進の意向を持っており、議会も推進派が多数を占める。実質的に推進派からの請求という異例の住民投票であった。
原発頼りの地域振興NO
推進派は、原発立地地域への国からの交付金や固定資産税による増収、地域振興を前面に戸別訪問。「賛成すれば一世帯に九百万円の協力金が出る」とのうわさも流れるほどだった。
海山町も他の原発立地地域と同様、過疎化と地場産業の衰退に悩む地域だ。かつて盛んだった漁業は、従事者の半分以上が六十歳以上。水揚げ量は二十年間で三割に減った。
それでも反対が大勢を占めたのは、原発による地域振興が幻想に過ぎず、漁業などの地元の産業の足かせにしかならないからだ。市民運動団体だけでなく、漁協も反対にまわった。もはや、誘致は原発の危険性を背負い込むだけであることが明らかになっていたのだ。
住民投票の出口調査では、反対の理由の五九%が「事故などの危険性が伴う」、一一%が「地域活性化にならない」だった。また、誘致賛成の人も含めた原発そのものに対する質問には、七二%が新設反対の意思を表明した(朝日新聞調査)。
原子力発電をめぐる住民投票で、反対派が勝利したのはこれで三度目となる。九六年に新潟県巻町で原発建設に、今年五月には新潟県刈羽村でプルサーマル計画の実施に住民がNOを突きつけた。
推進派主導の今回の投票での反対派の勝利は、いまや住民に問えば必ず原発反対となることを意味する。脱原発の流れは押しとどめがたいものとなっている。
原発に執着のエネルギー政策
政府は海山町の住民投票の結果についても「国民全体に理解を深めてもらう努力を今後とも続けたい」(福田官房長官・11/19毎日)と、なお原子力利用に固執している。
しかし、国民にとって原発推進政策を「理解」できる材料は一つもない。
静岡・浜岡原発事故(注)は、原発が避けようのない危険性を抱えていることをまたしても明らかにした。防衛庁は、原発が簡単にテロの標的になることを指摘している(11/18・朝日)。原発と住民生活とは決して共存できない。原発立地自治体さえも、年々減少する原子力施設の固定資産税と期限付き交付金の打ち切りで、悲鳴をあげている。
自民党は、国のエネルギー政策=原子力発電推進に国民や自治体の協力を義務付ける「エネルギー政策基本法」の制定を狙っている。「カネでだめなら強権で」というつもりだろうが、そんな横暴はもはや通用しない。
(注)浜岡原発事故 戻る
十一月七日、緊急炉心冷却装置(緊急時の安全装置)の動作試験中におきた浜岡原発一号機での事故。非常時用安全装置の一部の配管が破断し、原子炉建屋内に放射能を含んだ蒸気が噴出した。九日には放射能を封じ込める圧力容器底部から、放射能を含んだ冷却水漏れが見つかった。