2002年10月25日発行760号

【崩壊する原発推進路線 国と電力会社一体の犯罪行為 際限ない事故隠し】

十七基で事故隠し

 東京電力などによる原子力発電所の事故隠しは、原子力政策の破綻をかつてなく鮮明にした。

 東電の福島第一原発の原子炉損傷隠しに端を発した電力会社の事故隠し・点検結果捏(ねつ)造の発覚は全国に波及した。指摘されているだけでも、東北電力、東京電力、中部電力、日本原電、四国電力の七原発十七基にのぼる(資料参照)

 その主な内容は、シュラウド(炉心隔壁、燃料を収納している)や制御棒の配管、冷却水を再循環させる配管の亀裂などで、原発の心臓部に関わる問題だ(図)

 シュラウドは、燃料棒を支持し、冷却水の水流を整えるなどの役割がある。歪んだりすれば水流が乱れ冷却効果の低下を招く。原子炉の核分裂反応を制御する制御棒を炉心に入れられなくなり、事故がおきても原子炉が停止できないという事態をも引き起こす。米国原子力規制委員会は「ひび割れを抱えたまま運転すると、給水喪失など他の事故時に事故を拡大させる潜在的危険性がある」と警告している。

 東北・中部電力では再循環系配管損傷の隠蔽も発覚した。これは原子炉の空だきから炉心溶融などの大事故につながる可能性をはらんだものだ。

 原子力保安院と電力会社は「損傷は軽微。安全に問題ない」と口裏をあわせ、その多くは現在も運転し続けている。断じて許されない。

経費かかる原発

 原発は「電力自由化なら、原発に政府の資金支援を」と電力会社が泣きつくほどコストが高い。電力会社が「発電コストを削減する要は、稼働率の向上だ」(東電幹部)としている以上、トラブル隠しは原発推進政策の当然の帰結だ。一九八六年から十六年間の間、東電役員が自ら指示し組織的な記録改ざんを行わなければならなかったという事実がそのことを裏付けている。

 補修のために原発を止めると数億円、炉心隔壁を新品に交換すると百億円から二百億円の出費となる(9/2 朝日など)。しかもこれは原子炉一基にかかるコストであり、損傷が明らかになれば、次々と点検箇所が増えかねず、そのうえ全国の同型の原発の点検補修につながっていく。原子炉の老朽化によって、このような損傷が頻繁に、深刻なものになっていくことは避けられない。

 過去、保安院が電力会社に報告書の改ざんを指示した事実も明らかとなっている。

 政府・電力会社が一体となった事故隠しは、「大会社のモラル低下」などという問題ではなく、原発推進政策そのものに無理があることを示している。

直ちに廃炉を

 原発を持つ各国は、新設から二十年〜三十年で原子炉を廃炉にしているが、日本政府が想定する原発の耐用年数は六十年。原発の新規建設ができないことに加え、きわめて低く見積もった政府試算でも一基二百六十億円にのぼる廃炉経費を先送りするのが狙いだ。

 その上、今回の事故隠しを悪用して、保安院は一定のひび割れを容認する原発の安全規制緩和を打ち出した。この基準に基づけば、一連の事故隠しの損傷のほとんどは許容範囲内となる。政府はなりふりかまわず、原子力推進に固執している。

 しかし、小手先のごまかしで幕引きはできない。事故隠しではっきりしたのは、日本の原発がすでに満身創痍の状態であり、政府・電力会社が振りまいてきた「原発は安全」という神話が、嘘に嘘を塗り重ねたものでしかないという姿だ。

 朝日新聞の世論調査(10/5・6)では、「安全に重大な影響は無い」という国の説明に九割近くが「納得できない」と答え、原発推進反対が賛成を上回る四四%を占めた。原発立地の地元自治体・住民も不信感をあらわにしている。

 二〇〇二年は、原発推進政策にとどめを刺す大きな転換点になるに違いない。

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