2002年11月15日発行763号

【「アメリカの戦争の真実」を知る 学園祭で写真展と講演会 戦争と向き合う大学生】

 アフガニスタンにおけるブッシュの戦争犯罪を裁く国際民衆法廷。多くの若者たちがこの運動に共感し、その裾野を広げている。十一月四日には東京都立大学の学園祭企画の一つとして、前田朗・東京造形大学教授らを招いて「アメリカの戦争の真実」と題する講演会が開かれた。


被害に苦しむ民衆

 写真展示の準備に多くの学生があわただしく行きかう。講演会を主催した現代社会研究会の佐々木隆治さんは「今の僕たちの世代にとって戦争は実感のないものですが、前田先生たちが現地で調査してきた事実はとても説得力があります」と話しながらも「何人くらい来てくれるか」と心配そう。

アフガン現地調査報告をする
前田朗教授(11月4日・東京都立大学)
写真:アメリカの戦争の真実〜アフガン・イラクからの報告 と大書した紙が黒板に張り出された教室で、学生を前に前田教授が講義している

 定刻には八十人をこえる人が席についた。アフガン現地調査のビデオが始まると、累々と続く瓦礫や証言する被害者の姿にじっと見入る。前田教授は「何の軍事施設もないところに米軍は攻撃を加えた。こうした戦争に自衛隊は給油などで参加した。私たちはアフガン民衆を殺すことに加担した」と述べた。民衆法廷の意義については「世界の市民の前に歴史の事実を明らかにし、国際法の視点から評価を定める。戦争犯罪を裁く法理論をもって次の戦争を止めなくてはならない」とし、運動への参加を呼びかけた。

 続いて、今年四月イラクを訪れて調査活動を行った田浪亜央江さんが湾岸戦争以降も戦争被害に苦しむイラク民衆の姿をスライドで紹介した。劣化ウラン弾による放射能障害で次々と死んでいく子どもたちの姿。田浪さんは「イラク戦争が秒読みに入っていると言われています。この人たちの上にさらに攻撃を加えるなんてとんでもないことです。こういう気持ちを皆さんと共有したい」と思いを語った。

主催者のまとめのあいさつは一年生。高校生の時に学校の宿題で従軍慰安婦の問題を調べ、社会問題に関心を持つようになったという。「ブッシュとフセインの対立ばかりに目を向けるのではなく、それで誰が被害を受けるのかが大切だと思いました。アフガン攻撃に自衛隊が参加したことも見落としてはいけない。私たちは一般の人たちを苦しめる立場には立ちたくない、ときちんと示したい」との言葉に拍手がわいた。

活躍した一年生

 司会を担当した別の一年生は「緊張しましたよー」と声をあげた。小さい頃からシルクロードに憧れ、アフガニスタンはとても美しい国だと思っていた。戦争で荒廃した姿を知ってびっくりしたのが戦争犯罪に目が向くきっかけだったという。「テレビの向こうの遠い世界のことと思わず、これは今起こっていることなんだと今日の話を胸に残しておきたい。ちょっぴり無知ではなくなってきましたが、今度は何をしたらよいのか、と無力感を感じています」

 前田教授、田浪さんを囲んで打ち上げが始まった。佐々木さんは「もう少し来てくれればよかった」と言いながらも、「僕たちの金が使われているのだから、戦場の厳しい現実と向き合って考えていかなくてはと感じてもらえたのでは。日本が変な方に向かっていると考える学生は増えていると思いますよ」。前田教授から次回の現地調査の日程を聞いた二人の一年生は「行ってみたいです」「学生の今だからこそチャンスですよね」と目を輝かせていた。

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