2003年04月11日発行783号

【「誤爆」ではない戦争犯罪だ 市民虐殺も「作戦範囲内」】

 大量破壊兵器を実際に使い無差別の虐殺を行っているのは一体誰か? それはブッシュとブレアの米英の戦争屋たちであることが誰の目にも明らかになった。米・英軍は三月二十日のイラク攻撃開始から二十八日までだけで六百五十発の巡航ミサイルと五千発の「精密誘導爆弾」をイラクに撃ち込んだ。ブッシュ・ブレアによる国際法違反、戦争犯罪の空爆を許してはならない。


空爆はジュネーブ条約違反

 三月二十八日、バグダッドのアッシュウラ地区のナセル市場でミサイル着弾と見られる大爆発があり、イラク当局は「五十八人が死亡、数十人が負傷」と語った。カタールの衛星テレビ・アルジャジーラは「犠牲の大半は女性と子どもだ」と報じた。同じ日、バグダッド・マンスールの住宅街にもミサイルが着弾し八名が死亡。二日前の二十六日にも、バグダッド北東部シャアブ地区の市場に巡航ミサイル二発が撃ち込まれ、市民十五人が死亡、三十人以上が負傷した。

湾岸戦争時の劣化ウラン弾で白血病は急増(バスラ)
写真:入院中のイラク人少女。大きな目が愛らしい。ベッドに座る少女の傍らには赤い大きな風船かボールが置かれている。

 こうした民間人の被害についてNGO「イラク・ボディ・カウント」が各国の報道機関が伝えるデータを集計し、最大数と最小数を公表している。それによると開戦から三月二十八日までの民間人死者数は最大四百十三人、最少三百五人に上っている。

 これらの事態について米軍による「誤爆」と指摘する報道がある。だが、米中央軍は「攻撃計画の誤差の範囲内のこと」と語った。つまり民間人を殺すことは作戦の範囲内であり、明らかに意図的な殺人なのだ。

 戦時国際法であるジュネーブ条約(一九四八年)は、不特定多数を攻撃対象とした武器の使用を禁じている。空爆という行為それ自体がジェノサイド(大量虐殺)であり非人道的行為だ。衛星誘導・レーザー誘導は爆撃の効率性を高めるために開発された技術で、爆弾は軍人・民間人を区別して爆発などしない。民間人の死傷者が急増しているのは、焦りを深めるブッシュが空爆を拡大したことによる必然的な結果だ。

イラクは新型爆弾の実験場

 イラクへの一方的な先制攻撃そのものがイラク国民の主権・領土保全を犯す戦争犯罪であり、国連憲章や国際法に対する重大な侵犯だ。初めから国際法を破った侵略者に攻撃ルールをかえりみる姿勢などあるはずがない。

 民間人の殺害が意図的に実行されていることを証明するのが、クラスター爆弾の使用だ。

 この爆弾は、投下されると爆弾が空中で開き、缶ビール大の子爆弾二百個以上がパラシュート降下し、二百×四百メートル(八ヘクタール)の広範囲に飛散して爆発する。その内五%が不発弾として散らばり、わずかな衝撃でも爆発する地雷となる。米軍は湾岸戦争・コソボ紛争・アフガニスタン攻撃で約六万四千発のクラスター爆弾を投下し、不発の六十四万個の子爆弾が地上に残った。鉄クズや食料パックと間違えて子どもが触って死傷する例が後を絶たない。

 これは、戦闘参加者と保護されるべき市民を区別しないジュネーブ条約違反の武器だ。いま条約でこの兵器を禁止する案が国際的な論議となっている。

 アルジャジーラ放送は、三月二十二日にバスラ近郊にクラスター爆弾が投下され、五十人の子どもが死亡したと報じた。米海軍自身もペルシャ湾の空母キティホークの攻撃機がクラスター爆弾を投下していることを認めた(3/28)。

劣化ウランで空爆

さらに三月二十六日の記者会見で米中央軍のブルックス准将は、記者会見で空爆で劣化ウラン弾を使用したことを初めて認めた。

 戦車やコンクリート構造物の破壊に威力をもつ劣化ウラン弾は、爆発・燃焼によって酸化ウランの放射性微粒子を大気中に飛散させる。その放射線の影響で、周辺住民の間に白血病・ガン・各種の内臓疾患を引き起こす。

 実際に湾岸戦争(九一年)で米軍は三百二十トンの劣化ウランをばらまき、今なお白血病や小児ガン患者などの犠牲者を生みだし続けている。劣化ウラン弾は、自然環境に長期的に深刻な損害を与える武器として化学兵器同様にジュネーブ条約に違反する武器だ(今年二月欧州議会は使用禁止を決議)。

 健康被害を懸念する質問に対してブルックス准将は「過剰な言い方だ。安全だとわかっている」と開き直る一方で、使用した場所・日時を明らかにしなかった。湾岸戦争では砂漠でのイラク軍戦車攻撃に劣化ウラン砲弾が使用されたが、空爆で使用した今回は初めて市街地に劣化ウラン弾が投下されたと推測される。環境汚染と健康被害の危険性は格段に高まらざるを得ない。

 これら以外にも地中貫通爆弾(バンカーバスター)が使われ、新型の電磁波爆弾の投下も推測されている。イラクは米軍の新型大量破壊兵器の実験場となっている。

命を奪うライフライン攻撃

 空爆による民間人犠牲は、バグダッドだけではない。イラク・ボディ・カウントの集計によれば三月二十二日のバスラ空爆で五十名〜七十七名が死亡。同日、クルド自治区では五十七名〜百名が死亡。

 また空爆はジュネーブ条約で攻撃を禁止されたライフライン破壊をもたらし、市民の生存基盤を奪っている。バスラでは電気・水道施設が破壊され、安全な飲料水の供給が絶たれ、子どもなど弱者に伝染病が蔓延する危機に直面している。三月二十二日〜二十三日ナシリアでは二百軒の民家が破壊された。二十七日にはイラク西部のルトバで病院と救急車が爆撃を受けた。報道機関の目が届かないところ、通信の途絶したところでは市民生活が徹底的に破壊されている。

 米・英軍の非人道的空爆を直ちに停止させなければならない。空爆即時中止を求める国際行動をさらに強化しよう。

   

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