ロゴ:いまイラク現地は ミサイルに狙われる人々 2003年04月25日発行785号

〈緊急番外編〉 / 空爆、占領―高校生の訴え / 「悲しくてたまらない」

 「米軍に手を振る住民」―テレビの映像は本当なのだろうか。破壊されたのは軍事施設だけなのか。住宅地や市場を直撃したミサイルの被害は。イラク現地からの情報は限られている。米軍による虐殺現場はなおさらだ。何が起きているのか、占領下で暮らす人々の姿に思いを馳せよう。現地の声を紹介する。

暮らしはどうなるの

バグダッド市内の高校生。どうか、無事でいてほしい
写真:後者のベランダから肩を組み笑顔で手を振る三人の女子高校生。

 「こんにちは。僕はハイダー・アルハッサニ。17歳。

 僕はこの戦争がとても悲しくてショックでたまらない。僕たちの毎日の暮らしがどうなっちゃうのかがわかんないから。僕がこれから将来も生きていられるか、それとも死んじゃうのかってこともわかんない。そしてアメリカの軍隊が僕たちをめちゃくちゃにしちゃうのかどうかってことすらわかんない。こんな気持ちを君に伝えたいんだ。

 でも日本の人たちは心の奥では僕たちの気持ちがわかってくれてるってことを信じている。なぜかって、君たちも昔アメリカと戦争したことがあるからさ。だから同時にアメリカ軍が広島や長崎の人たちにしたことと同じように僕たちを攻撃するのかもって思うのがとても怖いんだよ。

 すべての世界の人たちは戦争を止めるためにアメリカに反対しなければならないと思う。でもそれはアメリカの人たちじゃなくて、アメリカの政府に対してなんだけどね。

 僕の夢はすべての人たちが平和の下に生きられること。そしてもう一つ、かなうならば僕は日本に行きたい。僕は日本の人たち、日本の文化が大好きだから。それに日本はとっても頭のいい国だから僕は日本で勉強したい。

 趣味は水泳とメールでチャットを友達とすること。だから君もいっしょにやろうよ!」

 イラクの高校生からのメッセージだ。市民調査団とともに、二月中旬からイラクに入っていた赤尾邦和さん(大学一年)が、米軍攻撃が始まる前に数十人に上る現地高校生の声を集めてまわった。

 「戦争が終わって、仮に政権が壊れても、生き残った彼らの生活はいつまでも続きます。そうした時に彼らのことを覚えてあげる、少しでもわかってあげる、それだけでも彼らにとって支えになるのではないかと思い集めました」と記している。

手がかりは想像力

 米軍の放った誘導弾は六千発以上にもなる。軍事関連施設のみならず、民家をも正確にとらえた。そのひとつひとつが街を破壊し命を奪う。

 「大事なことは想像力です。テレビでは激しい爆撃の映像だけが流れていますが、実際その下にいる人たちがどんな人たちなのかを知らないといけないのでしょう。こんな子たちが爆撃の下、テレビに映せないほど無残に(もしかしたら肉片も残らず)死んでしまう可能性があるということを知ってください。すべては想像力」と赤尾さんは自らのメッセージを添えている。

 「私の将来の目標は医者になり私の国、イラクと痛みを抱える子供たちを癒すことです」(モハメド・アリ、17)。「僕は平和があふれる世界で僕が愛する女性と結婚できることが夢です。そしていつかは医者になりたい」(アッバス・クッブ、17)。

 バグダッドを軍事占領した米軍は、自らを「解放軍」に見せるための情報操作に必死となっている。メディアの前でフセイン像を引き倒す演出を行う一方で、虐殺の実態を映し出す報道陣に対しては砲撃で口封じする。情報は限られているが、決して隠し通すことはできない。真実を伝えるわずかな情報を手がかりに、想像力を働かせることだ。

略奪者は米英軍だ

 民間人の犠牲者を集計しているイラク・ボディー・カウントは四月十一日までに少なくとも千百六十人を数えている。だが、この数は報道された最小値にすぎない。実態は、報道されない被弾地のほうがはるかに多い。しかも病院に運ばれた負傷者も、治療を受けられる体制にない。犠牲者ははかり知れない。

 米軍とともにイラクに入ったメディアは、略奪場面を繰り返し報道している。明らかに米軍による軍事占領を正当化しようという狙いが見える。

 だが、資源を奪い国土を奪い、人々の生活と命を奪った最大の略奪者は米・英軍に他ならない。

 私が訪れたバグダッドの学校や保育園の、そして街頭で靴を磨く多くの子どもたちの顔が浮かんでくる。彼らの無事と明日への希望を願わずにはいられない。(T)

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