2003年05月02日発行786号

【ウソ八百の「イラク解放」 / 米軍のヤラセにメディアは踊る / 「フセイン像倒し」は自作自演】

 湾岸戦争が「油まみれの水鳥」とすれば、今回のイラク戦争は「フセイン像の引き倒し」で決まりだろう。何の話かって。米国が戦争宣伝に使ったヤラセ映像の代表例のことである。道義なき侵略戦争を「イラク解放の戦い」に仕立て上げるために、ブッシュ米政権は様々な情報操作をくり広げてきた。その手口とウソを検証する。

「解放軍」をPR

 四月十一日付の読売新聞は「正しかった米英の歴史的決断」と題する社説を掲げた。いわく「バグダッドを制圧した米軍兵士を、首都住民は『解放者』として歓迎した。長期にわたる圧政から解き放たれた人々の様子からも、米英の選択が正しかったことが証明された、と言えるだろう」

 この一文がイメージしているのは、「フセイン像引き倒し」の映像である。確かに、あの映像には強烈なインパクトがあった。巨大な銅像が倒され、群衆が歓喜の声を上げるシーンを何度も見せつけられると、イラク民衆が米英軍を歓迎しているかのように思いこんでしまう。

 「市民」だけでは倒せなかったフセイン像を米軍の手助けで引き倒す―この構図はまるでハリウッド映画のようにわかりやすい。いや、あまりにもできすぎた話である。

 案の定、バグダッド市民やジャーナリストの話を総合すると、テレビが放送しなかった「フセイン像引き倒し」の真相が浮かび上がってくる。結論を先に言おう。あれは米軍による自作自演のヤラセであった。米軍は自らを「解放者」と印象づけるためのイベントを演出し、メディアに伝えさせたのである。

実は、サクラだった

 問題のフセイン像は、バグダッド市の中心部・フィルドス広場にあった。すぐそばには外国の報道陣が集まるパレスチナホテルがある。宣伝イベントを行うには、うってつけの場所である。

 現場にいたフリージャーナリストの佐藤和孝氏は、事件の一部始終を次のように証言する(4/27サンデー毎日)。四月九日の夕刻、誰もいない広場に戦車など数十台の車両部隊が入ってきた。車両は広場に展開し、米兵が配置についた。三十分も経たないうちに、十〜二十人のイラク人の一団が現れ、ハンマーやロープでフセイン像を壊し始めた。そして、ほかの市民が集まりだしたところで米軍車両が銅像を引き倒したという。

 佐藤氏の証言は、フセイン像の引き倒しが自然発生的なものではなく、謎の一団が先導して始まったことを物語っている。では、最初に現れた集団は何者なのか。実は、米軍が仕込んだサクラだった。

 倒れた銅像の上で喜び踊る「市民」をよく見ると、三日前に米軍用機でイラク入りした親米イラク人組織「イラク国民会議」メンバーの顔がある(米NGO「インフォメーション・クリアリングハウス」のWEBサイト http://www.informationclearinghouse.info/article2842.htm)

 つまり、メディアが報じた「バグダッド解放を喜ぶ群衆」は百人程度の集まりをフレームアップしたものにすぎず、しかもその中心は米軍が派遣したエキストラであった。

 「サンキュー、ブッシュ。くそ食らえサダム」といった「市民の声」も、サクラを使ったヤラセである。前述の佐藤氏によると、広場の騒ぎを遠巻きにしていた市民は「自分たちの国がなくなってしまった。どうしようもない虚脱感だ」と語っていたという。

略奪も米軍が煽動

 謀略と言えば、イラク各地で発生した略奪行為も米軍の手引きによるものだ。スウェーデンのダゲン・ニエター紙(4/11)は、「人間の盾」に参加していた元大学教員の目撃談を報じている。

 それによると、四月八日、バグダッド市内のハイファ大通りに進軍してきた米軍は、自治体行政府ビルの警備員を射殺し、扉を戦車で破壊した。その後、戦車に乗っていたアラビア語通訳が「好きなものを手当たり次第に持っていっていいぞ」と、隠れていた市民に略奪を奨励したというのである。米軍は近くにある法務省ビルでも同様の行為をくり広げたという。

 こうしてイラク全土に広がった騒乱状態は、米英軍による治安維持を求める声を引き出した(たとえば、アナン国連事務総長の発言など)。すると、米英軍は待ってましたとばかりに「秩序回復」用に部隊を再配置した。

 一連の動きはマッチポンプというほかない。米英軍はイラクに居座ることを正当化するために、略奪行為に火をつけ放置した。このため多くのイラク民衆が犠牲になった。米英の戦争犯罪は今も続いているのである。

   *  *  *

 今回の戦争では、米国の情報コンサルタント会社「レントングループ」が戦争宣伝に一役買っている。同社は湾岸戦争で「油まみれの水鳥」を仕掛けたところだ。テレビがタレ流す「イラク解放」映像を鵜呑みにしてはいけない。あれはブッシュ政権のPRビデオにすぎない。  (M)

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