2003年06月06日発行791号 books

読書室 / 反グローバリズムの熱い波

『利潤か人間か―グローバル化の実態と新しい社会運動ほんとうのアフガニスタン』 北沢洋子著 / コモンズ / 本体2000円+税

 いま、世界各国・各地域で反グローバリズムという熱い波が起きている。サミット級の国際会議が開かれるたびに、数万人から数十万人の人々が集まり、激しい抗議行動を展開する。参加者の構成は、環境保護団体・労働組合・農民団体など多岐に渡り、抗議のスタイルも実に様々だ。

 人々はなぜ経済のグローバリゼーションに反対するのか。彼らは何をめざそうとしているのか。本書は、反グローバリズムという新しい社会運動の現状を伝えるガイドブックである。

 本書の構成は前半・後半に分かれている。前半では、グローバリゼーションの推進機関であるIMF(国際通貨基金)や世界銀行の実態を簡潔にまとめている。そして後半では、反グローバリズム運動の現局面を対抗理論や戦略面を含めて論じている。

 反グローバリズム運動というと、マクドナルドやスターバックスを襲撃する無軌道な集団というイメージがマスメディアによって流布されてきた。著者によると、これは運動の広がりに手を焼いたIMF・世銀サイドによるNGO(非政府組織)分断作戦の一つだという。

 実際には、反グローバリズム勢力の側では、人間よりも企業の利潤を優先するグローバル資本主義に替わる「もうひとつの世界」の実現に向け、理論面での検討や実践が始まっている。人間と人間との連帯、人間と自然との調和を求める経済活動。これを「連帯経済」という。

 「連帯経済」は、地域レベルの経済活動とグローバルな規制という両輪で成り立っている。協同組合運動や地域通貨、参加型財政やフェア・トレード(途上国の協同組合による生産物を貧困根絶と環境保全のコストを組み入れた価格で取引する貿易活動)など、地域レベルの経済活動には様々な分野がある。

 たとえば、反グローバリズム勢力が一堂に会した世界社会フォーラムの開催地であるポルトアレグレ市(ブラジル)は、参加型財政のモデルと言われている。市の事業費の八〇%が市民でつくるコミュニティの自主運営に任され、その話し合いで予算の配分と事業の実施を決定する。この取り組みはスラムの解消など具体的な成果をあげている。

 こうした地域レベルの連帯経済を育むためにも、多国籍企業やその代弁者である国際機関に対するグローバルな規制が欠かせない。著者が言うように、連帯経済は地域レベルの実践と国際的な運動があいまって成立するものなのだ。

 史上空前のイラク反戦運動の高まりを米国の有力紙は「ブッシュ政権とグローバルな世論という、超大国と超大勢力の対決」と評した。反グローバリズムという新しい社会運動は、すでに世界を動かす力に成長している。本書はその息吹を伝えている。   (O)

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