2003年06月06日発行791号

【外征軍と化す自衛隊 有事法で先制攻撃】

 五月二十三日、日米首脳会談で小泉首相はイラク周辺国への自衛隊派遣を表明した(5/24・読売)。同日付の読売新聞は、日米政府関係者からの情報として、米国が日本に対して陸上自衛隊一千名と航空自衛隊C130輸送機の派遣などを要請していると伝えた。

 日本政府は、今国会中にも「イラク復興支援」を口実とした自衛隊派兵のための新法制定を狙っている。「復興」利権・石油利権に食い込むために、憲法を無視して占領軍へ武装部隊まで送ろうというのだ。

「協力・支援」は口実

 湾岸戦争直後の自衛隊掃海艇派遣(91年6月)以降、政府はことあるごとに派兵を拡大。今では、自衛隊の海外派兵は常態化している。

 一月三十一日時点で、PKO(国連平和維持活動)等協力法による自衛隊派兵は、東チモールとゴラン高原。

 ゴラン高原兵力切り離し部隊には、一九九六年から派兵し現在司令部要員二名と輸送部隊が駐留している。東チモールには一九九九年から派兵し現在司令部要員十名、工兵隊(施設部隊)六百八十人が駐留している。

 合計七百三十五名のPKO部隊派遣は、PKO参加八十八か国中十五位、G8諸国では第一位だ。

 日本政府は、六年間にわたってとぎれることなく自衛隊を派兵し続けている。

 これに加えて、テロ対策特措法により輸送部隊が二〇〇一年十一月から長期間派遣され、米アフガニスタン報復戦争とイラク戦争に参戦している。四月には、イージス艦導入の口実であった日本海の「常時監視体制」を放棄して、「こんごう」をインド洋に派遣した。海外参戦優先の作戦行動だ。

 その上、政府は、五月十九日の派兵期限切れを前に十一月一日までインド洋・ペルシャ湾への海上自衛隊派兵延長を決めた。

 PKOは国連の平和維持活動が終われば基本的には派兵できなくなるのに対し、テロ対策特措法による派兵は政府の解釈しだいで際限がなくなる。

 テロ対策特措法は、9・11のテロ事件を契機としているが、その活動は「我が国が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取組に積極的かつ主体的に寄与するため」とされ、協力する作戦行動も「テロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めることにより国際連合憲章の目的の達成に寄与するアメリカ合衆国その他の外国の軍隊その他これに類する組織の活動」となっている。つまりアフガニスタンでの「アルカイダ掃討」にとどまらず、政府が「対テロ戦争なら、国際機関の決議さえ不要。いつでも派兵できる」として無制限の派兵拡大ができるよう抜け道を作ってあるのだ。

 今回の派兵延長は、イラク占領政策支援とともに米国の次なる「対テロ戦争」に参画するための備えに他ならない。

侵略できる軍隊へ

 自衛隊の外征軍常態化とともに、侵略できる自衛隊への訓練が陸・海・空で着々と進められている。

 海ではすでに、アフガニスタン〜イラク戦争で給油だけでなく、米軍と自衛隊イージス艦による情報共有が行われた。

 空では五月一日、航空自衛隊が初めて米軍との共同空中給油訓練を実施。六月には、アラスカでの共同演習にF15戦闘機を米軍からの空中給油により参加させAWACS(空中警戒管制機)も同行して情報共有を行う。空中給油機は二〇〇六年から四機の配備が決まっている。

 陸では、五月十八日、市街戦訓練場の増設を決めた。自衛隊は着々と人を殺せる軍隊へと変貌しようとしている。

  *   *   *

 小泉首相は五月二十日の参院有事法制特別委員会で、「有事」の敵基地先制攻撃を認める発言をした。

 常態化した海外派兵、集団的自衛権のなし崩し的な行使、拡大する実戦訓練。米軍とリンクした海自・空自の情報を利用して、空中給油機で航続距離を伸ばした戦闘機の支援下で陸自が市街戦を展開するという図式が見える。

 この先制攻撃にフリーハンドを与えることこそ有事法案の正体だ。

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