2003年06月06日発行791号

【労働者の権利を全否定 「首切り自由」推進する東京高裁】

 「使用者は、労働者を解雇することができる」―経営者に「首切り自由」のフリーハンドを与える労働基準法の大改悪案。政府は今国会で強行しようと審議を急いでいるが、その動きを先取りする不当判決が東京高裁で相次いでいる。


 一九九九年秋から労働側を八連敗させた東京地裁だが、現在はほぼすべての労働事件が勝利判決や勝利和解となっている。ところが、東京高裁は地裁判決の逆転敗訴をはじめ反動判決のオンパレードだ。

 昨年秋以降でも、九月にカジマ・リノベイトの不当解雇事件、十月にJR採用差別の全動労事件、十一月にヒルトンホテルの有期雇用の雇い止め解雇事件、二月に反リストラ産経労の懲戒解雇事件、三月に平和学園の解雇事件と不当判決が相次いだ。

解雇基準は「貢献度」

最高裁行動に集まった労働者(5月21日・東京)
写真:有事法制反対のプラカードを掲げて行進する参加者

 特徴的なものが、JR採用差別事件の全動労判決。原告の控訴を棄却した東京高裁の村上敬一裁判長は「国鉄による採否の決定にあたり、採用希望者がJRの職員としてふさわしいか否かという観点からの相当程度の裁量が認められるべきであり、新たに民間業として再生するJRに、柔軟に溶け込み、規律にも従順で、その生産性や効率性を高められる人材を選別し、JRの業務にふさわしい者を採用候補者として選別することも当然」と組合差別を正当化した。さらに「(全動労組合員は)国是として国鉄の再建を担わされたJRの職場の秩序や規律を乱し、再建の妨げになる」と、組合つぶしのための分割・民営化を「国是」とまで持ち上げ、反対した原告を「国賊」扱いした。

 気にくわないと思ったら、使用者は労働者を堂々と解雇できるというのだ。

 ヒルトンホテル事件では、東京地裁が「有期雇用とは言え十四年間も働き続けており、合理的な理由がなければ一方的な雇い止めはできない」と原告を勝訴させたことを全面否定。高裁の奥山興悦裁判長は「会社に逆らう労働者を雇うのは酷である」と会社側を徹底して擁護した。

 また、平和学園事件で大藤敏裁判長は「四要件がすべて具備されなければ、整理解雇が解雇権の濫用になると解すべき根拠はない」と、整理解雇四要件の適用を否定。解雇の正当性の基準は四要件から、国や会社への貢献度合へと百八十度変えられた。

 高裁は、人間らしく働き続ける権利を全面的に否定し、労働者を虫けらのように扱う資本の論理の代弁者としての姿をむき出しにした。

*   *   *   *

 五月十五日に開かれた「東京高裁の不当判決を批判するシンポジウム」(主催・「首切り自由」は許さない実行委員会)では、東京高裁の評価と今後の闘う方針が議論された。「東京高裁の民事の裁判官は約九十人。労働部がないため判決は裁判官の個性にかなり左右されている」「村上のような確信犯は司法から追放するしかない」「個別の争議の闘いだけでは勝てない。共同行動の積み重ねで一人一人の裁判官を追及しよう」など、裁判所攻めの意義が強調された。

 明治書院労組の上西仁さんは「地裁前の共同行動の取り組みに裁判官は『名指しで批判されたのは生まれて初めて』と恐怖を感じていた。この共同行動が地裁に変化を生んだ。争議団がだんごになって高裁を攻めよう」と訴えた。

 二十一日には東京地評と全都反合共闘会議の共同行動として最高裁攻めが闘われた。村上の似顔絵入りの批判ビラをまいて裁判所を抗議した。

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