ロゴ:カルテの余白のロゴ 2003年06月20日発行793号

『更年期「障害」(上)』

  すべての女性におとずれる「更年期」ということばの響きは、多分にうっとうしさを伴うことが多いようです。それは、すぐに「更年期障害」をイメージするからでしょう。

 ○月○日 Aさん「今年に入って生理が飛ぶことが多いんです。ときどきカーッと突然熱くなるし、腰やら足やら痛くなるし…。気分にひどくむらがあって、自分でもなんか自分のからだって思われない変な感じ。これ、更年期障害ですよね? 家族が、早く診てもらってひどくならんうちに、何か薬もらっといでって」。そういうAさんですが、表情には活気があります。私「それで、これまでに比べて、ひどく困ってます?」 Aさん「いえ、毎日のことにはあんまり影響ないです。汗いっぱいかくのは困るけど…。しょっちゅう着替えてますわ」

 Aさんは、自分のからだが、そういう時期にありがちな、でも決して病気ではない状態であることをごく自然に受け止めています。症状が毎日の生活を脅かしているほどでないので、念のための血液検査と整形外科で初歩的な診察をうけることで不安はなくなりました。

 ○月○日 Bさん「更年期でしょうか。食欲もなく、いらいらするし、何にもしたくない気分です。毎日がつらくて…」と涙ぐまれています。

 私「夜は眠れます? 家のこと、誰か手伝ってくれます?」 Bさん「眠れないのでよけいに昼間いらいらするし、食べる気にもなれません。家族は、体の不自由な義母のことなども全部わたしがやるものと思ってますし」

 とりあえず、眠れることが一番大切のようだったので、軽い睡眠薬を処方。お姑さんの介護に、ヘルパーさんがお手伝いできないか検討してみることにしました。

 一週間後、「眠れるようになって、いらいらもましになったし、食欲も出てきました」と、すこし表情にもゆとりがみられるBさん。ヘルパーさんの話は具体的には進んでいませんが、何より家族が「今までと同じようにしようと思ったら、よけいしんどくなるで」と、できることを手伝うようになってくれたことが、一番よく「効いた」ようです。

 更年期の症状は、人によって内容も程度も期間も一様ではありません。気力だけで直せるものではなく、その対策は、食事や生活の見直し程度の対応から、薬物療法の併用(ホルモン補充療法などを含め)を必要とする場合まで、それこそさまざまです。

 次回では、その方策について考えてみましょう。

(筆者は、大阪・阪南中央病院産婦人科医師)

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