2003年06月20日発行793号

【イラク民衆の血で太るベクテル 米英の占領は強盗そのもの】

 「イラクと北朝鮮の最大の違いは、イラクは石油の海の上で泳いでいることだ」と述べ、イラク戦争が石油目的であったことをウルフォウィッツ米国防副長官が認めた(6/4ドイツ・ターゲシュピーゲル紙、同ベルト紙)。イラク占領当局や「復興」利権を漁る米グローバル資本の言動で、そのことはますますむき出しになっている。イラクに対する白昼強盗ともいうべき米英とグローバル資本の好き放題を許してはならない。

図:ベクテル社のロゴに禁止マークを重ねたベクテル禁止ロゴ

暴かれるベクテルの犯罪

 六月一日から五日にかけて、米大手ゼネコン(総合土木建設業)のベクテルに対する連続抗議行動が米国各地で取り組まれた。本社のあるサンフランシスコをはじめワシントン・シカゴ・ヒューストン・ピッツバーグなどのベクテルのビルの前で抗議の座りこみやパフォーマンスが行われた。(写真 sf.indymedia.org 1 2 3 4 5

 この行動はイラク戦争に反対してきたグローバル・エクスチェンジやグローバル企業監視のNGOなどが取り組んだものだ。行動の目的は、(1)ベクテルの企業活動が世界で引き起こしている人権侵害、環境・健康破壊の事実の暴露、(2)ブッシュ政権がベクテルなどと共謀して進めている「復興」名目のイラクへの経済侵略・資産強奪行為の停止を訴えることだった。

世界中で民衆苦しめる会社

 バグダッド占領直後の四月、米国際開発局(USAID)は電気・道路・水道などの一年半に及ぶインフラ復旧事業をベクテルに発注した。総額六億八千万ドル(約八百十六億円)という巨額の契約である。

 このベクテルは、世界のいたるところで環境や健康破壊、人権侵害を引き起こしているグローバル資本の代表格のような企業だ。今回のイラク「復興」事業の中には水道事業も含まれているが、ベクテルは過去、世界各地で水道の民営化事業に関わり住民に大きな被害をもたらしている。

 ボリビアのボチャバンバの例では、ベクテルはボリビア政府から水道の民営化事業を請け負ったが、その時水道料金を三倍に値上げ。このため、最貧困層が水道を利用できないという深刻な事態が生まれた。住民の抗議行動によって政府は契約を解除した。ベクテルは契約解除による損害賠償を求めてボリビア政府と争っている。

 ベクテルが復興事業に関われば、水道のような生存に不可欠な社会基盤も金がなければ利用できない営利事業に切り替えられ、イラク民衆の生活や生存権を破壊するにちがいない。

戦争を生み出すシステム

 そもそもベクテルは、戦災復興事業でボロ儲けをするために軍需産業や石油企業とともにブッシュの戦争計画を進めた黒幕のひとつであった。

 一九九九年から二〇〇二年にかけて、ベクテルはさまざまな選挙の立候補者たちに百三十万ドル(一億五千万円)を献金し、この政治的コネクションを利用してブッシュ政権に戦争突入させ、イラク「復興」契約をかち取った。

 実際、USAIDの発注は入札などの競争もなしに任意に決められたもので、米国議会でも批判の声が上がっている。

 ブッシュ政権のラムズフェルド国防長官が、一九八〇年代にレーガン政権の特使としてイラクを訪れ、イラクから紅海に面したアカバ港(ヨルダン領)につながる石油パイプラインをベクテルが建設する計画を薦め、それがフセイン政権に拒否されたことを暴露する報告(「Crude Vision」http://www.actagainstwar.org)が最近出された。報告はこれが九〇年湾岸戦争の主要な背景であり、今回のイラク戦争にもつながっていると指摘している。

 ベクテルがイラク戦争を望み、実際に戦争が強行され、イラク石油利権のからむ「復興事業」を受注―まさに「筋書き通り」であり、これこそ戦争を生み出すシステムなのだ。

イラクの石油代金強奪する米国

 しかもブッシュ政権は、この「復興」事業の費用をイラクの資産を売り払うことで調達しようとしている。

 米国が国連安保理で強引に採択(5/22)させたイラク経済制裁解除決議に基づく「イラク開発基金」の口座がニューヨーク連邦準備銀行に開設され、五月中にすでに十億ドルが振り込まれていた。

 「イラク開発基金は(米国の思いのままになる)イラク中央銀行の中に置く」と定める安保理決議そのものが不当なものだが、占領国米国が自国の銀行に資金を送金することは明確なジュネーブ条約違反だ。この資金は、石油・石油製品・天然ガスなどの売却代金であり、本来、イラク国民だけが支出を決定する権利を持つ資金である。米国の行為はイラクからの強盗行為に他ならない。

行き詰まるかいらいづくり

米英によるイラク侵略行為・強盗行為を「解放」と「復興」に見せかけるためには、米英の意のままになるかいらい政権=暫定統治機構を形だけでも早急につくる必要があった。この暫定統治機構を軸に、石油部門をはじめイラクの国有企業の民営化=グローバル資本による全面的な略奪を進める計画だった。

 しかしその思惑は大きく狂いだしている。米英による暫定占領当局(CPA)は六月一日、暫定統治機構をつくる第一歩と位置づけていた「国民議会」の開催を取りやめ、米国の任命する政治評議会(二十五〜三十五名)を設置すると発表した。

 暫定統治機構は、米国防総省と亡命イラク反体制派がイラク戦争開戦前から描いてきたもの。その中心を担わせるために米国が育ててきたイラク国民会議などは国民の支持を集められず、親米派が国民議会多数を確保するメドがまったく立たない。加えて、米軍の占領に対するイラク国民の反発が高まり、反フセイン体制派の政治組織からも米軍撤退要求が出されるという事態なのだ。

自衛隊派遣は民衆抑圧の共犯

 国防総省が送り込んだ復興人道支援室(ORHA)のジェイ・ガーナー代表がイラク側の反発を呼び、代わりに送り込まれたブレマーCPA代表も反フセイン派の取り込みに失敗した。

 米国は、武力を背景とした強権的占領を長期化させようとしている。反米感情の高まっているバグダッド西部のファルージャには四千人の米軍部隊が増強配備された。フセイン政権残党狩りを口実にイラク国民への武力行使が日常化される。それは、まさに国際法に違反する重大な犯罪行為であり、戦争状態が続いているのだ。日本から派遣されようとしている自衛隊は、このような占領地に乗り込み銃口をイラク民衆に向ける共犯者となる。

 ベクテルなどグローバル資本の経済侵略を暴き、米英占領軍の即時撤退を求める国際共同行動が求められている。

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