2003年06月27日発行794号

【「イラク全土が戦闘状態」 民衆殺す自衛隊イラク出兵】

 ブッシュ大統領は五月一日、バカげた演出で空母に降り立ち、「戦争終結=勝利宣言」をした。だがイラクでは米英両国の占領支配に対する抵抗闘争が強まっている。小泉内閣はそのイラクに自衛隊を派兵し、民衆の抵抗を武力弾圧しようとしている。それは、自衛隊が正真正銘の侵略軍となることを意味する。

広がる占領への抵抗闘争

 イラクでは、四月のバグダッド陥落以降も米軍の民間人への無差別発砲・殺害が繰り返されていたが、五月後半から米軍に対する攻撃が相次ぎ、戦闘状態が激化している。

頻発する米軍への攻撃

 主なものを拾ってみると、五月二十六日、バグダッド北部のファルージャで米軍の車両が襲撃を受け、二人が死亡、九人が負傷。六月一日には、バグダッド市内で米軍の戦車に手榴弾が投げ込まれ、米兵一人が死亡。さらに十二日には、イラク西部で米陸軍第101空挺段師団所属のAH64アパッチ攻撃ヘリコプターが対空砲火を浴びて撃墜された。

 フセイン政権崩壊以来、攻撃による米兵の死者は報道されただけでも約四十人に達している。

 こうした事態を受けて、イラクでの地上戦を指揮するマッキャナン司令官は、「イラク全土はまだ戦闘地域だと考えている」(6/13朝日)と言わざるを得なくなっている。

 米英占領当局(CPA)のブレマー行政官は六月一日、「治安回復」を名目として、イラク国民に二週間以内に対戦車砲や小銃などを供出するよう命じた。しかし、現在の供出数はわずか数百点にとどまっている。

連日のように反米デモ

 米軍に対する軍事的攻撃だけではなく、市民による反米デモも毎日のように行われている。医療環境の改善を求める医師たちのデモや失業した軍人による給料支払いを求めるデモも行われた。

 対立が伝えられていたシーア派教徒とスンニ派教徒の共同デモも行われている。スンニ派の指導者アフマド・コバイシ師は、「宗教上の違いはあるが、米国の占領継続を拒否する点では一致結束している」(6/11毎日)と語っている。 

 米英の占領支配への反発が強まっているのも当然だ。

 七千人を超える民間人殺害(NGOイラク・ボディカウント)への怒りはいうまでもないが、米英軍の占領統治が始まって二か月たつ今も破壊された水道設備や電線・電話線などの復旧は進んでいない。家庭で使う液化石油ガス(LPG)も不足している。

 米国の狙いが石油にあることは誰の目にも明らかになっている。米軍は石油省ビルをがっちり防衛しながら、イラク国営石油販売会社(SOMO)の本社ビルは略奪に任せた。同社の職員は、「米国はSOMOを解体し、民営化したうえで、自ら投資に乗り出し、利潤を掌握する腹づもりなのではないか」(6/13毎日)と推測する。

 占領支配への抵抗闘争が強まる中、米兵が住民に対する疑心暗鬼から、結婚式のパレードや検問所を通過する車など一般市民に対して無差別発砲する事件が相次いでおり、住民の怒りをかき立てている。

 そのため民衆の間でも、「『解放者』を自称しながら、実際は『占領者』以外の何ものでもない。…占領には武力で抵抗する」(6/10毎日)と占領支配に対する批判が強まっている。六月十三日には、米英による石油の略奪に抗議してトルコ向けの石油パイプラインが爆破された。

進まぬカイライづくり

 ブレーマー行政官は六月一日、突如「国民議会を取りやめる」と発表。代わりに、単なる諮問機関にすぎない「政治評議会」を置く方針を打ち出した。翌二日には、復興人道支援室(ORHA)を米英占領当局(CPA)に統合すると発表した。

 これは、米国の強さのあらわれではない。「イラク人による統治」という見せかけすら投げ捨てざるを得ないほど、米国のいいなりになるカイライ政権づくりは進んでいないのだ。

 この決定に対して、イラク国民の間でも「サダムに代わって米国の独裁が始まった」(6/14毎日)との不信感が広がっている。

イラク民衆の自決権を侵害

 小泉内閣は六月十三日、「イラク復興支援特別措置法案」を閣議決定し、国会に提出した。これは、米英占領軍に自衛隊が加わるもので、イラク民衆の抵抗闘争鎮圧に直接加担するものだ。

武器・弾薬の輸送も

 法案は、「イラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラク国民による自主的な努力を支援」するためと称して、「人道復興支援活動および安全確保支援活動」を行うとしている。

 「安全確保支援活動」とは、米英占領支援のための「医療、輸送、保管(備蓄を含む)、通信、建設、修理もしくは整備、補給または消毒」とされるが、「テロ対策特別措置法」では禁止されていた「武器・弾薬の陸上輸送」も禁じられてはいない。

 これは、軍事用語でいう「兵たん」活動にあたり、戦闘の不可欠の一部である。現在、米軍が集中的に攻撃を受けている分野だ。

 さらに武器の使用も認められており、政府は無反動砲や機関砲など重火器装備の装甲車派遣まで方針化した。

大砲装備し一千名が侵略

 石破防衛庁長官は十三日の記者会見で、「戦闘行為」について「国または国に準ずる者による組織的・計画的な武力の行使」と定義してみせ、イラクには「戦闘地域はない」と強弁した。

 だが、イラクの現状は、占領者である米英軍への反感が広がっている事態だ。占領に反対する勢力のゲリラ戦による抵抗闘争に対し、米軍は大規模な掃討作戦を再開し、犠牲者が続出している。

 もし自衛隊が現地に入れば、PKO(国連平和維持活動)以外での初めての他国領土上陸=イラク出兵だ。大砲まで装備した一千名の武装部隊が占領軍の一員となる。それは、イラク民衆の抵抗闘争を鎮圧し、自決権を侵害するものだ。

 民衆を殺りくするイラク新法と自衛隊出兵を許してはならない。

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