米英軍は今回のイラク攻撃で、湾岸戦争を上回る量の劣化ウランを主要都市に撃ち込んだ。フォトジャーナリスト広河隆一さんをリーダーとするイラク戦争被害調査チームは、破壊されたイラクの戦車からハイレベルの放射線を検出した。湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾は、ガン・白血病や先天性欠損症を引き起こし、患者はいまも増え続けている。米英軍の犯罪行為は計り知れない。(豊田 護)
戦車の厚い鋼板をうち抜く
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戦車は南部の都市ナシリヤ郊外の幹線道路の下に放置されていた。あたりには砲弾や黒こげになった部品が散らかっている。砲塔部の正面と後部に七〜八センチほどの穴があいていた。弾丸が貫通したように見える。
後部の穴に計器を近づけた。「ピー」とかん高い音が響いた。放射線量を計るガイガーカウンタの針が振り切れている。感度を千分の一に落とした。針は中央で止まった。ホテルの部屋で計ったときの二千倍から三千倍の値だ。正面の穴は、反応がなかった。
他の場所でも、多くの破壊された戦車を見た。そのつど放射線量を計測をしてみたが、針が振れるものはなかった。対戦車砲弾はほとんど劣化ウラン弾になっている。計器が反応しないのは不思議だった。
通常の2000倍井所運放射線量を計測(バグダッド郊外)
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専門家に聞いてみた。ウランの出す放射線は、アルファ線だ。持参したガイガーカウンタにはベータ線・ガンマ線を測定する計測管がついていた。計器が反応するのは、アルファ線を浴びた他の金属が放射能を持ったからだ。粉塵となって飛び散ったウラン酸化物粒子が放出するアルファ線を計ることはきわめて困難なことだとわかった。
アフガニスタン国際戦犯法廷の証人として来日した劣化ウラン研究者ダイ・ウィリアムズさんは「米軍も湾岸戦争後、同じような測定をして、放射能はないと結論づけた」と米軍によるごまかしを指摘している。
米軍も使用認める
湾岸戦争のとき、劣化ウラン弾は南部の砂漠地帯で大量に使われ、バスラを中心に、ガンや白血病などが多発している。放射線による被害であることに間違いない。今回、爆撃に使われた劣化ウランの量は五百トンをこえている。対戦車砲弾だけでなく、地下施設を破壊するバンカーバスターにも使ったことを米軍特殊作戦司令部の幹部は認めた。「都市や人口密集地で劣化ウラン弾の使用を避けることなど決してしなかった。バグダッドの繁華街の建物を砲撃しさえした。もちろん劣化ウラン弾でだ」(ニュージーランド独立系メディアhttp://www.scoop.co.nz/)―この幹部は、他の主要都市も同じとインタビューに答えている。
住宅地にも劣化ウラン弾が使用された(バグダッド・万スール地区)
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バグダッドのマンスール地区に行った。サダム・フセインが隠れているとの情報で、四月七日、ミサイルが撃ち込まれた場所だ。主要街路から一筋入った住宅地だった。着弾地では、家のがれきで穴を埋める作業が続いていた。直径二十メートル、深さは七〜八メートルはありそうな穴だ。バンカーバスターが使われたに違いない。
作業をしていたナビルさん(29)は、おばさんと三人のいとこを亡くしている。隣の家は八人、全滅した。
ガイガーカウンタは、暑さのためか正常には働かなかった。通りがかりの人が寄ってきた。「放射能は大丈夫か」と聞かれた。「爆撃直後のホコリさえ吸い込まなければ大丈夫だ」と広河さんは答えた。アルファ線は皮膚で止まる。体内に取り込まない限り大丈夫だ。だが、作業で立ちのぼる粉塵にどれだけの放射能があるのかわからない。
恐ろしい悪魔の兵器
ダイ・ウィリアムズさんは二十三種の爆弾・兵器に劣化ウランが使われている可能性があると指摘している。クラスター爆弾の名前も挙がっていた。「劣化」とは放射能が低減しているわけではない。多くの研究者がいうように「ウラン兵器」と呼ぶのがふさわしい。それは、核兵器の一種であり、放射線被曝により何代にもわたって人々を苦しめる悪魔の兵器だ。イラク全土で、今後どれだけの被害が出てくるのか。想像するだけで恐ろしい。一刻も早く、米英軍にすべてを除去させ、責任をとらせねばならない。 (続)
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