2003年4月23日、国連人権委員会は「女性に対する暴力撤廃」と題する決議(2003 / 45)を全会一致で採択した。概要は次のようなものである。
『クマラスワミ報告者の活動を歓迎し、報告書に留意する。1993年の「女性に対する暴力撤廃宣言」以来、この問題に関心が高まってきたことを歓迎する。
女性に対する暴力とは、女性に身体的、性的、心理的な苦痛を与えるジェンダーに基づいた行為を意味する。脅迫、自由の恣意的剥奪、ドメスティック・バイオレンス、名誉の名において行われる犯罪、人身売買、女性に有害な伝統的慣行、女性性器切除、強制結婚、ダウリー、商業的性的搾取など。
家庭で生じる女性に対する暴力を強く非難する。これは、女性に対する差別や女性の社会的地位の低さに応じて行われる。女性に対する暴力は、女性の心身の健康、再生産や性的な健康に影響を与える。強姦、女性性器切除、近親姦、人身売買などは女性にHIVなどの病気の危険をもたらす。
女性差別撤廃条約や女性差別撤廃委員会勧告19号に従って各国政府の責務を想起する。女性差別撤廃条約当事国に選択議定書を批准し、条約への留保を制限するよう促す。
各国には、女性の人権を促進し保護する是正の責務と、女性に対する暴力の予防・捜査・処罰の責務がある。殺人や、組織的強姦、性奴隷制、強制妊娠などの強姦など、武力紛争状況で行われた女性に対する暴力を強く非難する。国際刑事裁判所規程とその「犯罪の成立要素」に、ジェンダーに基づいた犯罪が盛り込まれた。武力紛争状況における女性に対する暴力の不処罰を根絶する努力が重要である。シエラレオネ特別法廷規程に女性に対する犯罪が盛り込まれ、被害者証人保護が設けられたことを歓迎する。不処罰を撤廃する努力や真実和解委員会にジェンダー視点を導入するよう促す。性暴力被害者を扱う平和維持部隊員にジェンダー訓練を提供するよう促す。
情報の調査、収集、研究の国際協力をいっそう強めるよう各国と国連に促す。国連人権文書に従って提出する報告書に女性に対する暴力などの情報を盛り込むよう各国に促す。暴力撤廃のための措置を評価・監視するための適切な国内機関の設置を検討するよう各国に呼びかける。
特別報告者が収集した情報に対応するよう促し、すべての政府に特別報告者への協力と支援を要請する。特別報告者に、他の特別報告者や専門家と引き続き協力し、必要があれば共同調査・報告を行うよう勧める。特別報告者に、さらに情報収集に務め、地域的国際機関と協力するよう勧める。地域レベルでの女性に対する暴力撤廃の努力が強まっていることを歓迎する。各種の人権特別報告者、国連機関、人権条約機関に女性に対する暴力問題への取り組みを続けるよう促す。
必要な援助、スタッフ、財源を含めて特別報告者の任務を更新するよう国連事務総長に要請する。女性に対する暴力特別報告者の任務を3年間更新するべきである。特別報告者に2004年の人権委員会に報告書を提出するよう要請する。特別報告者の報告書が女性の地位委員会や女性差別撤廃委員会で関心を払われるよう国連事務総長に要請する。この問題が2004年の人権委員会で優先的に扱われることを決定する。経済社会理事会に、本決議を留意して、特別報告者の任務を3年間更新し、特別報告者の活動を援助することを決定するよう、勧告する』