デュナンが敷き詰めた赤十字への道は1世紀を越える歴史の中で着実に世界に広がり、充実していった。
赤十字は基本的に、赤十字国際委員会と、各国の赤十字社とその連盟から構成されている。
赤十字国際委員会は、ジュネーヴに本部を置き、15人以上25人以内のスイス人手構成されることになっている。戦争、内戦や国内の騒乱事件の犠牲者に対して人道支援を行い、赤十字の基本原則が守られるように監視し、ジュネーヴ諸条約の理解を求め、国際人道法の普及に努力している。本部には赤十字博物館があり、一般に公開されている。
一方、国際赤十字・赤新月社連盟は、各国の赤十字・赤新月社の国際的な連合体である。第1次世界大戦終了後に、アメリカ、イギリス、フランス、イタリアおよび日本の赤十字社代表が5社委員会を組織して、赤十字を国際連盟に匹敵する組織に連合することを決めた。当初は赤十字社連盟と称したが、後に現在の名称になった。連盟は、各国の赤十字・赤新月社の人道支援活動を推進し、各国間の連絡調整を行い、災害被災者への救援を行う。
各国赤十字・赤新月社は、2003年1月1日現在、赤十字社149か国、赤新月社30か国、計179か国というネットワークに発展している。紛争や災害時の傷病者救護、平時における災害対策、医療保健、国際人道法の普及に努力している。
これらの赤十字の最高決定機関として赤十字・赤新月国際会議が開かれる。赤十字国際委員会、連盟、各国代表に、ジュネーヴ条約加入国政府代表を加えた構成であり、政治的性格をもつ討論は行わず、人道援助と救護に関する基本方針を議論する。
1965年にウィーンで開催された第20回国際会議は7項目の「赤十字基本原則」を決議した。デュナンの提唱に始まる赤十字活動の歴史を踏まえて、敵味方の区別なく人間の生命を尊重する人道の原則が柱となっている。
1)人道:赤十字の目的は生命と健康を守り、人間の尊重を確保することにある。すべての国民間の相互理解、友情、協力および堅固な平和を助長する。
2)公平:国籍、人種、宗教、社会的地位または政治上の意見によるいかなる差別もしない。ただ苦痛の度合いにしたがって個人を救護することに努める。
3)中立:すべての人から信頼を得るため、戦闘行為の時いずれの側にも加わることを控え、いかなる場合にも政治的、人種的、宗教的性格の紛争には加わらない。
4)独立:各国の赤十字・赤新月社は、その国の政府の人道事業の補助者であり、その国の法律に従うが、つねに赤十字の原則に従って、その自主性を保たなければならない。
5)奉仕:赤十字・赤新月社は、利益を求めないヴォランタリーな奉仕をする救護組織である。
6)単一:ひとつの国にはひとつの赤十字・赤新月社しかありえない。赤十字・赤新月社はすべての人に門戸を開いている。
7)世界性:赤十字・赤新月社は世界的機構であり、各社は同等の権利をもち、相互援助の義務を持つ。
これらの基本原則にしたがって赤十字・赤新月社は、国際紛争はもとより、国内紛争や突発事件に機敏に対処し、人命救助に全力を挙げてきた。紛争の最中に失われた赤十字・赤新月社メンバーの数も多いが、無私の活動は国際的に高く評価され、尊敬を集めている。
赤十字国際委員会のサイトはhttp://www.icrc.org
国際赤十字・赤新月社連盟のサイトはhttp://www.ifrc.org/