2004年01月23日発行823号
ロゴ:占領拒むイラク民衆

本紙記者サマワ緊急ルポ(2)

【サマワの人々むしばむウラン兵器汚染 / 400倍の放射線量を検出】

 「劣化ウラン弾が使われたかどうか承知していない」「危険なものとは思わない」―日本政府は、現地情報をひた隠しにして、自衛隊派兵を強行した。だが、イラク南部のサマワは、13年前の湾岸戦争時にも攻撃を受け、昨年3月の侵略戦争でも大きな被害を受けている。ウラン兵器による放射線汚染、その被害も間違いなく存在していた。(豊田護)


驚きの計測値

広場で遊ぶ子どもたち。劣化ウラン弾汚染の危険性は知らされていない(1月8日・サマワ)
子どもたちが広場で遊んでいる。すぐ近くに高射砲が見える。

 サマワの中心地から、北へわずか2キロメートルぐらいだろうか。ユーフラテス川を渡り、堤防状の道を進むと崩れた塀やコンクリートの柱が数多く残る広場にいたる。その一角に、2門の高射砲があった。子どもたち数人が遊ぶ姿があった。穴を掘っている大人たちもいた。あたりは畑やナツメヤシの林だった。人家は見えない。

 「ここは食肉解体場として利用されていました。あまり市民がやってくるところではないのですが、場内には不発弾も残っていて危険です」

 案内してくれたのは、地元サマワで戦争犯罪を摘発しようと活動するサーレさん。昨年4月の爆撃で弟を殺された。

 高射砲はさびついた砲身を振り上げていた。劣化ウラン弾があけた穴を探した。砲身の中ほどに鋭い切り傷の跡をみつけた。気がつけば、たくさんの子どもたちが取り巻いていた。どこからか、どんどん集まってくる。歓声でガイガー・カウンターの音が聞こえない。

 台座の焦げ跡に計測管を近づけてみた。昨日の雨で濡れている。針が大きく振れた。感度を100分の1に落とした。放射線量は毎時60マイクロシーベルトにも達した。室内では毎時0・1から0・2マイクロシーベルトだった。400倍前後の数値だ。

周りで遊ぶ子ら

 「ガリガリガリ」と鳴り続ける計器の音を子どもたちに聞かせたかった。少しでも、危険な場所であることが伝わらないかと願った。だが、子どもたちはまったく無頓着だった。

 「このあたりの人は、誰もここに劣化ウラン弾があることを知りません。占領当局は、弾丸の残骸や武器を持ち帰った。この高射砲も撤去するように要請したのですが、残ったままです」

 昨年3月サマワを攻撃したある米兵は「我々は5回掃射した。最初の掃射は標準取り扱い手順によって劣化ウランで(撃った)」と両親にメールを送っている。オランダ軍は、昨年12月27日、サマワで30ミリ劣化ウラン弾を発見したと発表した。「他にも危険な場所はある」とサーレさんは言った。

自衛隊員も被曝か

 バグダッドとクウェートの輸送路にあたるサマワは、湾岸戦争でも激しい攻撃を受けた。その後も米英軍は飛行禁止空域を設定し、爆撃を繰り返した。そして昨年、サマワに三たび劣化ウラン弾を撃ち込んだのだ。

 県の健康センターを訪ねた。白血病やガンなどの統計資料がないか聞いてみた。健康局長に代わって対応した管理部の責任者は、最新統計は手元にはないが後日メールで送ると約束した。

病院の内部。衛生状態はよくない。
病院の中で働く職員の姿

 サマワ産科小児科病院に出向いた。白血病などの困難症例は、バグダッドに送られ、この病院では扱っていないという。だが、病室を案内してくれた医者が、死亡した新生児のサンプル写真を提供してくれた。尻から足先までがまるでダイコンのように一本になっていた。はじめての経験だったと医者は付け加えた。

 米軍将校は昨年5月、イラク全土の都市でウラン兵器を使ったと、すでにメディアに答えている。サマワも例外ではなかった。そしてその被害も例外とはならない。

 日本政府は、この明白な事実に目をつぶり、耳をふさいでいる。的はずれな被曝線量確認バッジを持たされる自衛隊員が哀れでもある。だが、その上にも腹が立つ。サマワ住民が日々さらされてる健康に対する脅威にほおかむりして、なんの”人道援助”か。

 日本政府は、湾岸戦争に続きイラク侵略を真っ先に支持し、ウラン兵器をイラク民衆に使用させた責任がある。重金属障害・放射線障害に対する治療経験を蓄積する日本として、住民の尿検査実施など償うべきことはいくらで提案できるはずだ。

 何十万人・何百万人もの罪もない人々の命を奪い、将来にわたってどれほどの犠牲者が出るかはかり知れない恐怖を撒き散らした責任は、あまりにも重い。   (続く)

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