2004年02月27日発行828号

【沖縄 名護新基地建設は阻止できる ―「代替なし普天間返還」協議の意味】

 沖縄米軍普天間基地の返還のための代替施設として名護市辺野古沖に計画されてきた海兵隊新基地建設が揺らいでいる。日米両政府の最近の動向から見える建設阻止の展望をSDCC(ジュゴン保護キャンペーンセンター)の松島洋介さんに投稿してもらった。


 2月20日新聞各紙は、アメリカが普天間基地の代替施設建設抜きでの返還を日米協議の課題としていると一斉に報じた。また普天間基地機能の嘉手納への統合および日本国内外の米軍基地への分散が検討されていると報じた。

 これは、ラムズフェルド国防長官が昨年11月沖縄を訪問した際「こんなところ(普天間飛行場)で事故が起きない方が不思議だ。代替施設の計画自体、もう死んでいる」(2/13毎日)と指摘し、国防総省にSACO最終合意(注)の見直しを指示したとの報道を裏付けるものだ。

ジュゴン守れの世論が決定的力

 この見直しの背景には、アメリカ軍の世界的な戦力再編がある。そしてこの戦力再編を「代替施設なしの普天間返還」協議に向かわせたものは何か。沖縄県民をはじめ全国の市民の「ジュゴンの海をまもる」世論が新基地建設を大きく遅らせてきたことだ。

 アメリカは今、世界的な戦力の再編成を急いでいる。あらかじめ紛争場所を想定し、大量の兵力を配置する戦略から、兵力の柔軟な展開と機能的な運用に重点を置いた戦略への転換である。2003年度米国防報告によれば海兵隊については「2時間以内で地球上のどこにでも戦略能力を投射すること」が検討されている。

 一方、「ジュゴンの海をまもる」運動は粘り強く広がり、名護新基地建設計画を阻んできた。基地建設のための海底ボーリング調査ひとつとっても、昨年5月には着工の予定が、防衛施設局はいまだ着手できていない。

 日本自然保護協会の調査によって、海底ボーリング調査がジュゴンのえさ場である海草藻場をこわすことが明らかにされた。これに対して那覇防衛施設局が、海底ボーリングによるジュゴンその他環境への影響は小さいという根拠に示した「専門家の助言」は、専門家の名前すら公表できないおそまつなものである。ジュゴン保護キャンペーンセンターが呼びかけた「海底ボーリングやめろ」の抗議ファックスやメールは全国から集まり、那覇防衛施設局がファックス回線を切るという事態にもなった。そして東京、大阪、沖縄などで自衛隊イラク派兵反対行動とむすんだ「ジュゴンの海をこわす海底ボーリング中止」をもとめるピースウォークが取り組まれた。

 こうした運動によって名護新基地計画は遅々として進んでいない。SACO最終合意から5〜7年以内とされた普天間返還は実現されず、新基地は今後最短でも環境アセスに3年、建設に10年かかる。だからアメリカも「もう死んでいる」と見切りをつけざるをえなくなってきたのだ。

計画断念迫られる日本政府

 石破防衛庁長官は「(米軍の再編協議に)普天間代替施設の白紙撤回は結びつかない」と否定した。政府は名護新基地建設のために膨大な「振興」予算をつぎ込み、沖縄県民の反基地世論の押さえ込みを執拗に図ってきた。その経過からすれば簡単に計画破綻を認めるわけにはいかないからだ。

 しかし一方で石破長官は「海兵隊の配置をどうするのかという中でSACOは考慮する要素に入ってくる」と示唆せざるを得ないのだ。日本政府はジレンマに陥っている。もしあくまで名護新基地建設に固執すれば、ここまで基地建設を遅らせてきた沖縄県民、全国の市民の粘り強い闘いはいっそうひろがり、沖縄の基地支配そのものをゆるがすものになるにちがいない。

ボーリング調査へ抗議の集中を

 あらゆる回路を通じて新基地建設のプログラムを遅らせていけば名護新基地建設は必ずやめさせられる。そしてこの闘いは、「ジュゴン保護区」の設定と嘉手納をはじめとする沖縄の基地撤去へとつながっていく。

 今、沖縄県は那覇防衛施設局が海底ボーリングのために申し入れた公有財産使用協議への態度表明をせまられている。「沖縄県はジュゴンの海をこわす海底ボーリング調査に合意するな」のファックス、メールを集中しよう。市民アセスなごの仲間が、「市民からの方法書」を作成した。これに学び、3月にも公告が想定される防衛施設庁の「環境アセス方法書」に意見書を提出しよう。「ジュゴンの海に基地はいらない。イラク占領おわらせよう」のバナーを持って3・20国際行動に参加しよう。

(注)SACO最終合意

 95年の米兵による少女暴行事件をきっかけに沖縄の基地を削減するとして発足した日米特別行動委員会(SACO)がまとめ、96年12月に日米政府が合意した報告。米軍11施設、計5千ヘクタールを返還するとしたが、実現したのは2施設だけ。

《要請先》
(FAX)
沖縄県土木建築部河川課 河川課長
098-860-3164
(Eメール)
沖縄県総務部知事公室広報課
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