イラクでの日本人拘束事件で、日本政府は自らの責任放棄を覆い隠すためマスコミを使って「自己責任」を宣伝した。これを問うシンポジウム「『自己責任』論をめぐって」が5月30日、都内で開催された(主催はワールド・ピース・ナウ実行委員会)。
「占領終結」を訴える(5月30日・東京)
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司会のVAWW-NET-Japan共同代表西野瑠美子さんは「拘束された5人と家族に浴びせられた『自己責任』は、政府批判をする者は許さないというごう慢な姿勢の表れ。しかし国際的に見れば、イラクで拘束された人に費用を請求したのは33か国中で日本だけだし、海外メディアも『日本社会のいじめの体質を示している』(ニューヨークタイムス)などと批判を加えている」と問題提起した。
アジアプレス・インターナショナル代表の野中章弘さんは「今、殺される側であるイラクの人々の姿がほとんど伝えられていない。歴史に残る虐殺を記録することはジャーナリストの責務なのに、今ほどマスコミが政府寄りに傾いている時はない。『読売』は外国でテレビを見て『米軍は歓喜の声で迎えられた』と報道し、サマワからは大手マスコミがすべて撤退した。『自己責任』の狙いは、国家のコントロールに従わず活動をしようとする人たちを叩くことにある。これを許すと社会全体の萎縮につながる」と危険な狙いを指摘する。
NGOの立場から日本の外交姿勢を批判したのはピース・ボート共同代表の吉岡達也さん。吉岡さんは事件発生後ただちにカタールのアルジャジーラ本社へ行き、記者と協力して解放に向けて様々な呼びかけをおこなった。「最もアラブ社会へのルートを持っているのに、政府関係者は1秒も姿を見せなかった」と憤る。
アルジャジーラの記者が激怒したのは、チェイニーと会談した小泉の言葉が伝わった時だという。「解放表明と同時期、必要もないのに小泉は拘束者をわざわざテロリスト呼ばわりした。何人もの記者が『小泉は人質を殺したいのか』と食ってかかってきた。解放後、大使館に『出演してお礼の言葉を』と頼んでも断られた。政府は市民の命など何とも思っていない」
今後の運動の方向について吉岡さんは「市民が世界へ出て行って顔が見える活動を広げ、情報を政府だけに握らせないようにすることが重要だ」と発言。野中さんは「パレスチナのガザ地区では、市民は殺された子どもの遺体を危険なために埋葬できず、家庭冷蔵庫で保存している。イラクでもパレスチナでも、これ以上、アメリカや日本の国益の名による殺人は許されない」と占領による虐殺を厳しく断罪した。
最後に「日本人ジャーナリスト襲撃事件の責任は日本政府の自衛隊派兵にある」「占領の終結を要求する」と緊急声明を発した。