イラクからの自衛隊撤退求める首都での行動
|
|
イラクに大量破壊兵器はなかったことをブッシュもブレアも認めざるを得なくなった。イラク戦争には何の正当性もなかった。戦争を支持し、占領支配への加担を今も続ける小泉の責任を問い、自衛隊の即時撤退を迫らなければならない。
つくられた"イラクの脅威"
米英両国政府がイラク戦争の大義としたイラクの大量破壊兵器はなかったことが確定した。両国で相次いで発表された公式の報告書が、そのことを認めたのだ。
開発計画すらなかった
米上院情報特別委員会(ロバーツ委員長)は7月9日、イラク戦争に関する報告書を発表した。報告書は、この戦争が大量破壊兵器開発やテロ組織との関連をめぐる「誤った情報」に基づくものだったことを初めて公式に認定した。また、フセイン政権による「核開発計画の再編成」や「生物・化学兵器の保有」「攻撃用生物兵器計画の実施」の情報が誤っていたと指摘。大量破壊兵器の保有はおろか、その開発計画の存在すら否定した。
14日には英国で独立調査委員会(バトラー委員長)の報告書が発表された。同報告書も、大量破壊兵器情報に「重大な欠陥があった」と指摘。開戦に道を開いた個々の情報の信ぴょう性を否定した。
特に、フセイン政権が大量破壊兵器を保有していると断定したブレア政権の文書(02年9月)について、「イラクは45分で大量破壊兵器の配備が可能」との情報は「根拠がなく、盛り込まれるべきではなかった」と指摘。イラクが核開発に利用する目的でアルミ管を入手したとの情報や、移動式生物兵器製造施設を保有との情報も、「実態を伴っていなかった」と断定した。
地に落ちた戦争の大義
大量破壊兵器情報をめぐっては、ブッシュ政権の指示で捜索に当たってきた米イラク調査グループ(ISG)のデビッド・ケイ団長が今年1月、「われわれはほとんど間違っていた」と発言。イラクに大量破壊兵器はなかったと主張し、全世界に大きな衝撃を与えた。
さらに米紙USAトゥデーは7月2日、イラクでの査察を担当していた国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)が、イラクは1994年以降、特別な大量破壊兵器は保有していなかったとする定例報告書をまとめた、と伝えた。報告書は、フセイン政権崩壊後もイラクで大量破壊兵器が発見されないのは、国連査察で発見できなかったことと一致する、と指摘しているという。
このように、実際に査察に携わったメンバーは、大量破壊兵器はなかったと明言してきた。それが今回、米国では超党派の委員会で、英国では政府任命の独立委員会の調査で、裏付けられた。イラクに大量破壊兵器はなかったことが確定し、イラク戦争の大義は完全に葬り去られた。
ブッシュ大統領は「大量破壊兵器の備蓄は発見できなかったが、サダム・フセインはこうした兵器をつくる能力を有していた」と弁解に努めているが、ニューヨーク・タイムズ紙とCBSテレビの共同世論調査では「イラク戦争に踏み切るべきではなかった」が51%と初めて半数を超えた。
加速する撤退の流れ
イラク民衆のレジスタンス(抵抗運動)が激化し、イラク攻撃に正当な理由がなかったことが明らかになるにつれ、イラクから派遣部隊を撤退させる国が増えてきている。
フィリピン軍が撤退
7月19日には、フィリピンが部隊を完全撤退させ、占領参加国に衝撃を与えた。米国は「テロリストに誤ったシグナルを与える」として撤退を牽制したが、アロヨ政権は「中東に100万人以上いる出稼ぎ労働者をはじめ、世界に800万人以上いるフィリピン人の幸福は重大な国益だ」として、8月20日の駐留期限を前倒しして部隊を撤退させた。
パウエル米国務長官は「失望した」と不快感を表明したが、フィリピンのマスコミは「間違った米国の主張から始まった戦争にわれわれは引き込まれた。イラク占領に関するわが国の国益は、米国などとは異なる」(英字紙インクワイアラー)、「今回のドラマはフィリピンに大失敗をただす機会を与えてくれた。米国のイラク侵略はとんでもない過ちであることが証明された。私たちは参加すべきでなかった」(英字紙スター)と、政府の決断を支持した。
政府が海外での出稼ぎ労働を奨励しているという条件があるとはいえ、イラク戦争の大義が地に落ち、撤退が世界の流れになっているからこそ、米国を後ろ盾とするアロヨ政権が前倒し撤退を決断できたのだ。
すでに8か国が撤退
イラク占領に参加したのは国連加盟191か国中わずか38か国にすぎなかったが、すでにニカラグア・シンガポール・スペイン・ノルウェー・ホンジュラス・ドミニカ・フィリピン・タイの8か国が撤退を完了または開始しており、9月末にはニュージーランドが撤退を始める。
ポルトガルも11月までの駐留継続を発表しており、それ以降の撤退を匂わせている。オランダは、駐留継続の期限を来年3月までとしている。
イラク暫定政府への"主権移譲"を追認した国連安保理決議1546が採択した後も、新たに多国籍軍への派遣を決めたのはトンガだけだ。
イラクからの撤退は、もはや動かしがたい流れとなっている。
小泉の居直りを許すな
イラクに大量破壊兵器はなかったことは、もはや誰も否定できない明白な事実である。"イラクの脅威"はつくられたものだった。世界の民衆が叫んできたように、イラク戦争には何の正当性もなかったのだ。
ところが、イラク戦争をいち早く支持した小泉首相は今なお、「イラクに民主的な安定政権をつくるために、正しい選択だった」(6月21日)、「(イラク戦争全部が)正しかった」(6月27日)と発言してはばからない。そればかりか、国会にはかることもなくブッシュに多国籍軍参加を約束し、自衛隊をイラクに駐留させたままだ。
しかし、こうした"まず派兵ありき"という憲法無視・国民無視の姿勢は国民の不信を招き、一時の"小泉人気"は見る影もない。7月11日の参議院選挙でも自民党は改選議席を守れず敗北し、内閣支持率も36%(7月18〜19日実施の朝日新聞世論調査)と内閣発足以来の最低を記録した。自衛隊の多国籍軍参加については「支持せず」が59%(6月18〜20日実施の日本テレビ電話調査)と、民意は"派兵ノー"だ。もはや、法を無視し大義もなしに小泉がやりたい放題できる状況ではなくなっている。
大義なき戦争を支持し、自衛隊をイラクに派兵した小泉の責任を徹底的に追及し、自衛隊の撤退を実現しなければならない。