2004年09月15日発行854号

【共和党大会に50万人がデモ ニューヨーク ブッシュにノー!イラク占領にノー!】

 米国内では今、11月大統領選を控え、ブッシュ・ノー、占領の即時中止・撤退を求める運動が大きく広がっている。共和党の大統領候補を決める党大会前日の8月29日、UFPJ(平和と正義のための連合)などが呼びかけたニューヨーク行動は、イラク戦争をめぐる最大のデモとなった。日本からICTI(イラク国際戦犯民衆法廷)や全交代表とともに参加したユース・ピースアクション関東の木村朋子さんに寄稿してもらった。


ブッシュが息子を殺した

 共和党大会前日の29日、大会会場(マジソン・スクウェア・ガーデン)があるニューヨーク中心部で、ブッシュの政策反対・イラクからの占領撤退を訴えるデモが行われ、50万人以上の人々が参加した。『ニューヨーク・タイムズ』などマスコミも「過去10年間で最大規模の反大統領デモ」と評する行動となった。

ブッシュにノーを突きつけた50万人デモ(8月29日・ニューヨーク)
写真:『イラク占領終結』のプラカードを掲げ道を埋め尽くす人々

 テロ警戒とデモ対策のため2万人以上の警官が動員され、会場周辺は道路が封鎖。通行者が制限されるなど厳戒態勢がしかれた。デモ隊の「暴徒化」を警戒し、警官がデモコースに張り付くばかりか、デモコースに向けては監視カメラが何台も特設されていた。

 警官たちの緊張した面持ちをよそに、デモは平和的に行われた。私たちはデモ隊の最前列で待機。11時半頃ようやく警察から最前列に置かれた柵を開けるとの説明があった。

 続いて主催者側からゆっくりスタートしようと説明されると、参加者一人一人が十分に高まった期待と興奮を抑えながら「押すな、ゆっくりだぞ」と隣や後ろに声をかける。そこには「私たちは暴れに来たのではない。ブッシュ政権にノーを、イラク占領にノーを突きつけに来たのだ。そのためにデモは平和的なものにしなければならない」という思いに満ちた空気が広がっていった。ゲートが開くとゆっくりと人々は動き出した。

イラク帰還兵も抗議

 デモの雰囲気は実に自由。大通りが全面デモコースとなり、それぞれのペースやスタイルで歩く。どこからかコールが起こればそれに続き、歌い出す人がいればそれに合わせ、参加者同士が語り合いながら歩く姿も多く見られた。

マイケル・ムーア監督もアピールに
写真:演台に乗りマイクを握るムーア監督

 参加する団体も多様。反戦団体、退役軍人の会、労働組合、女性の団体や学生、同性愛者、移民、ケリー支持者の団体など。

 その中で最も注目を集めたグループの一つが、イラク戦争帰還兵の隊列だ。20代の若者数人が並び、中には片足を失い車椅子で進む帰還兵の姿もあった。これからハンディを抱えて生き、また戦場で人を殺した経験やその残虐な光景の記憶を抱えて生きていく同世代の若者を前に、国が若者を戦場に送ることの罪深さをひしひしと感じた。

 そして「ブッシュが私の息子を殺した」「息子を返せ」というプラカードをもつ女性たちや9・11被害者家族などが続く。

 ブッシュ政権の押し進める対テロ戦争、グローバル資本主義の下で直接の犠牲となっている当事者たちがアメリカ国内でどんどん増えてきている。彼らはブッシュ政権がごく一部の人々の利益しか守らないことを身をもって知っているのだ。共和党がイラク占領成功と必死で主張する軽薄な言葉の一方で、ブッシュ政権を根底から揺さぶる大きな波は力強さを増していると感じた。

1000人のひつぎの行進

 もう一つ注目されたのが、イラク戦争で戦死した米兵士約1000人分の星条旗をかけたひつぎの隊列だ。その隊列はコールをあげることもなく静かにひつぎを運ぶ。「彼らは誰に、何のために殺されたのだ?」と無言のメッセージを持って訴えかけた。

 11時半にスタートしたデモは17時半まで続いた。予想の2倍にのぼる50万人以上の人々がアメリカ国内、世界から集結し、ブッシュ政権に、イラク占領に、ノーを突きつけた。共和党大会会場はまさに「反戦、反ブッシュの波の中に浮かぶ孤島」となっていた。

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