2004年11月24日発行864号

【Q&A無防備地域 宣言は自治体の責務】

 無防備地域宣言運動の広がりに、政府や自治体当局は「反論」やけちつけを行い流れをおしとどめようと必死だ。国際法に基づく無防備地域は、今日それほど大きな意義を持つ。「反論」が全く根拠のないことを、Q&Aで随時明らかにしていく。


Q 地方自治体は無防備地域を宣言することはできないのでしょうか。

根拠のない政府見解

 日本政府の公式見解は、「当該地域の防衛に責任を有する当局、すなわち我が国においては、国において行われるべきものであり、地方公共団体がこの条約の『無防備地域』の宣言を行うことはできません」(首相官邸ホームページ)というものです。この見解の根にあるのは「外交・防衛は国の専管事項である」という考え方ですが、政府はその理由を説明していません。

 政府は「条約当事者は国だから政府にしか権限がない」と言いたいのでしょう。確かに、憲法は第73条で内閣の職務として「外交関係を処理すること」をあげています。しかし、これは例示にすぎず、その権限が内閣のみに属することを示したものではありません。現に総務省の自治行政局も「地域の国際化の推進」として自治体レベルでの国際交流を推進し、多くの自治体が国際交流関係の部局を設置しています。いわゆる「自治体外交」が定着しているのです。外交は決して「国の専管事項」などではありません。

 「防衛」は、「内閣の職務」に例示もされていません。それもそのはずで、日本は憲法上「国権の発動たる戦争と武力による威嚇・武力行使」を国際紛争の手段としては放棄したのですから、政府が軍事的な意味での「防衛」を所管すること自体が違憲です。

 政府見解とは、何の法的裏付けもない「言ったもの勝ち」を狙ったにすぎないのです。

自治体こそが宣言主体

 無防備地域を定めたジュネーブ条約第1追加議定書は、「適当な当局」が無防備地域を宣言できると明記しています。武力を行使するのは常に各国中央政府であり、その政府が国内戦時体制の確立とぶつかる「無防備地域」を住民保護のために設定するとは限らないからです。

 制定された国民保護法の下では、住民の命は守られません。同法は戦時における政府→都道府県→市町村→国民という避難命令系統整備を定めたに過ぎず、自衛隊は戦闘優先で住民の避難誘導はしません。「住民保護」は自治体に丸投げなのです。

 かりに地域住民を安全に避難させるとすれば、何日も何週間もの時間が必要です。政府が想定する「ミサイル攻撃・テロ攻撃」では、数分で一定の地域は壊滅するのですから、住民保護は不可能です。戦争政策のコストとして「死者○人の犠牲」を前提にするというのが、政府の「国民保護」の正体です。

 だからこそ、中央政府から独立した地方自治体こそが、住民保護―無防備地域宣言の主体となり、自治体平和外交に踏み出して、戦争の根を絶つべきなのです。

 地方自治法は、「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的活総合的に実施する役割を広く担うものとする」と自治体の事務を定めています。「福祉の増進」の前提にあるのは、生命・財産の保護なのですから、地域住民を一切攻撃させない手段である「無防備地域」を宣言できるよう常日ごろから準備することが自治体の責務です。

拒否は許されない

 追加議定書は第1条で「締約国は、すべての場合において、この議定書を尊重することおよびこの議定書を尊重することを確保することを約束する」としています。また国民保護法第9条でも「国民保護のための措置実施に当たっては、国際人道法の的確な実施を確保しなければならない」と定められています。

 冒頭の政府見解も、それを理由に条例制定請求を拒否する自治体首長・議員の行為も、追加議定書に反し、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と定めた憲法第98条に反します。むしろ日本政府は、追加議定書を批准した当事者として「適当な当局が無防備地域を宣言できる」とする議定書を尊重し、「自治体も無防備地域を宣言できる」という国内手続きを認め、進めていかなければなりません。「尊重する」とは、「遵守しその内容を実現する」ことに他ならないからです。

 そして今、地域から自治体から国際法に基づく平和創造の流れをつくり出し、戦争に突き進む政府にストップをかけていくときなのです。

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