イラク占領軍がまたも大規模な虐殺を行っている。戦争屋たちの意志により、多くの市民の命が奪われ、恐怖におびえる生活が1年半以上続いている。日本では台風・地震などによる被害が相次ぎ、いまも避難生活を送る人びとがいる。その心労は計り知れない。もし、日本がイラクだったらと考えてみた。
(豊田 護)
もし日本だったら
爆撃で破壊された家の跡でたたずむ少年(サマワ)
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今年の夏、日本列島に多くの台風が襲来し、各地に土砂崩れ・浸水などの災害を発生させた。特に10月後半、相次いだ台風と新潟中越地震により、100人を超える市民が亡くなっている。余震が続く新潟では、1か月近くを経過しても避難生活を余儀なくされている人びとは、2万人近い(11月13日現在)。電気・ガスは言うに及ばず、食料や水が手に入らない状態さえあった。避難所での精神的ストレスから命を縮めた人も出ている。
被災地の悲惨な状況が伝えられると、日本各地から多くのボランティア・義援金が集まった。何か手助けができればと考え、行動することは自然なことだ。
電気・水道が使えない。下水が破壊されトイレが使えない。そんな話を聞く度に、イラクで出会った避難民の姿を思い浮かべた。汚れた川の水をくむ子どもたちがいた。夫を亡くし収入源を絶たれた家族は借家を追い出され、破壊された空軍将校クラブに身を寄せ合っていた。旧国防省の建物に住み込んだ人びとは、散乱する書類を燃料にホブス(無発酵パン)を焼いていた。
まさに無差別殺人
イラクでは、10月に入り毎日100件を越える戦闘が続いていた。占領軍による「武装勢力掃討作戦」とそれに対する反撃はイラク全土に及んだ。そして11月8日、占領軍はファルージャへの猛爆撃を始めた。昨年3月、バグダッドが受けたときよりもさらに激しいものだ。
人口30万人といわれるファルージャでは、4月の攻撃ですでに千人近くの人びとが殺された。地元紙(イラクパトロール、クドゥスプレスなど)やイスラム法学者機構機関誌によれば、占領軍は狂犬や毒蛇の類まで街に放っていた。そして今回、クラスター爆弾やナパーム弾といった無差別殺戮兵器とともに有毒ガスまで使用していると伝えている。
多くの市民が街を脱出しているとはいえ、少なくとも万単位の人びとが占領軍の攻撃に曝されている。恐怖の中に閉じこめられている。
旧国防省の書類でパンを焼く(バグダッド)
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占領軍は、ファルージャで「国際テロリスト・ザルカウィ」を取り逃がしたと発表した。「もともとザルカウィなどいない」とファルージャ市民が明言している人物だ。きっと戦火はラマディやバクーバなどバグダッド近郊都市に限らず、北部キルクークや南部の都市ナジャフ、バスラにも拡大されるだろう。占領軍が攻撃をしたいところに、「ザルカウィがいる」といだすに違いないからだ。それは自由・平等を求める市民レジスタンスの運動を暴力で抑え込むことにもなる。市民の手による自治組織や治安警備チームが潰されないよう願わずにいられない。
日本は戦争屋の一味
イラクで起こっていることを日本に置き換えて考えてみる。イラクの人口は約2500万人、日本の5分の1にあたる。イラク市民はこの1年半の間に10万人以上殺されている。日本に置き換えれば50万人の死者に匹敵する。
毎日、北海道・札幌市から沖縄・那覇市まで主要な都市で戦闘が引き起こされていることになる。ファルージャはさしずめ川崎市(人口120万人)や神戸市(人口150万人)規模の都市といえる。水も食料もない状態で、家の中でじっと爆撃の振動と被弾の恐怖に耐えている市民の姿を思い描いてほしい。
ファルージャの病院は爆撃で機能麻痺状態だ。医療スタッフは逮捕され、医薬品は封印されたという。総合病院の医師はイラク全土の医師に救援を求めている。
もし、日本の各地にこうした映像が配信されれば、きっと多くのボランティアが危険を顧みず、負傷者や避難者の救援に駆けつけるはずだ。軍隊の蛮行に非難の声を上げることだろう。そうあってほしい。
台風や地震など自然現象をなくすことはできない。しかしそれが災害となり、人命を左右してしまうのは政治の責任である。
まして戦争屋たちの行為は、行為そのものを止めさせることができる。しかも日本はその戦争屋たちの仲間として小泉首相の言う「独自の判断で」軍隊を差し向けている当事者なのだから。
イラクの人びとを虐殺し続けている占領軍。日本の軍隊がその一味に加わっている恥ずかしさと悔しさを強く感じる。 (続く)
バグダットの子どもたち
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