2004年12月08日発行866号

【全国に広がる無防備地域運動】

市議会で陳述した4人(前列)が報告(11月24日・枚方市)
写真:屋外でにこやかに並ぶ4人

 国際人道法・ジュネーブ条約に基づく無防備地域宣言運動がますます注目を浴び、全国に広がっている。世界初の条例化をめざす大阪・枚方市では議会審議が開始された。東京都荒川区や神奈川県藤沢市では来年1月、署名運動が開始される。奈良市や兵庫県西宮市では年内に市民の会が結成される。準備、検討している地域は続出している。


【枚方市 市長の見解は誤り】

 「平和・無防備都市条例案」の審議が始まった枚方市議会で11月24日、直接請求代表者による意見陳述が行われた。

 4人の陳述は、「本条例案を制定することは無理がある」と述べた枚方市長意見を理を尽くして批判し、「条例制定は無理ではない」ことを納得させるものだった。

 鹿児島県鹿屋生まれの廻(めぐり)廣己さんは、戦争体験をもとに「市が市民を必ず守る、そんな枚方市を築いていきましょう」と訴えた。

 鈴木めぐみさんは、これまでの平和施策や社会教育でのテーゼが他市に先駆けた枚方市独自のものであったことを紹介。「今回の無防備条例も世界初、日本初となる。新しいものに名乗りを上げることは勇気のいること。私も勇気をもってこの運動に参加した。市民も勇気をもって署名してくれた」と議会の英断を訴えた。

立法化に支障はない

 弁護士の松本健男さんは、法的側面から市長意見書を全面的に批判。「適当な当局」の解釈については、ジュネ−ブ条約の審議を紹介。「国のみが設定当事者とされていたが、審議の結果、国以外の『適当な当局』が主たる当事者として加えられたのであり、この『適当な当局』に自治体が入ることは明白である」と政府見解を批判した。また、「国法の体系上、条約に基づいて条例を制定することは想定されていない」とする市長の見解も誤りだ、と明言した。「ジュネーブ条約の政府による批准によって、条約に国内法の法形式たる性格が認められたのであるから、自治体がその内容を条例として立法化することには何の支障もない」

 最後に登壇した大田幸世さんは、「この署名を呼びかけた一人として、市議会でどのように論議されたのかを、市民に伝える義務がある」と語り、「意見を述べる場をもっと市民に保障してください」「本当に充分な審議をしてください」と再三訴えた。

 傍聴席を埋めた市民は4人の意見陳述に拍手で応えた。

 市議会はこの日の採決を行わず、「慎重な審議を行う」ことを決め、総務常任委員会に審議が付託された。

 総務常任委員会は12月9日に開かれる予定だ。

【荒川区 来年1月署名スタート】

 東京・荒川区では、来年1月14日から直接請求署名がスタートする。条例案の直接請求には、1か月の間に有権者の50分の1にあたる約3000筆以上の署名が必要だ。

 「無防備地域宣言をめざす荒川区民の会」は11月19日、会事務所を開設。受任者を募り、ビラ5万枚を用意するなど、年内の追い込みをかけている。

 11月25日には区内で、直接請求署名成功に向けた集いがもたれた。事務局によると、当日段階で賛同者は112名、受任者は49名。「年内に5万枚の全戸チラシ入れ、7回の駅頭情宣行動、5地域での住民説明会などに取り組み、受任者300名に広げ、1万筆署名を実現させよう」と呼びかけられた。

 参加者の間では「街頭でのぼりを立て、横断幕を張り、住民が一目でわかるような運動で雰囲気を作ろう」「受任者一人一人のこれまでの活動領域を生かし、署名をさまざまな層に広げる取り組みを」など、活発な意見が交わされた。

【準備会がシンポジウム ―滋賀県大津市】

無防備地域宣言シンポジウム(11月28日・大津市)
写真:武器なき社会は可能だと書いた看板がかかる会場

 「戦争国家への道をまるごと変えよう! 市民の手でつくる平和非戦の街へ」をテーマに無防備地域宣言シンポジウムが11月28日、滋賀県大津市で開かれた。主催したのは、来年の夏から秋にかけて直接請求署名運動を検討している「無防備地域宣言をめざす大津市民の会準備会」。

 週刊MDSの豊田護記者が「イラク市民レジスタンスと非武装の社会」を報告したのをはじめ、無防備地域宣言運動全国ネットワークや枚方市無防備都市条例を実現する会がホットな取り組みを報告。地元の大津市会議員も「市民運動が平和の街をつくる」と発言した。

 大津市民の会準備会がいま力を入れているのは、国民保護法に対する自治体交渉。11月9日に滋賀県総合防災課と初交渉。大津市長にも質問書を提出し、29日に大津市総務課と交渉をもつ。国民保護法により国の言いなりで戦争協力を行おうとする自治体。これに歯止めをかけるのが無防備地域宣言運動であることを市民に明らかにしていく。

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