戦後60年の区切りの年−2005年を強制労働問題解決の年にと、この問題に全国各地で取り組む人々が12月5日、都内で全国集会を開き立法化など方針を議論した。
強制連行・強制労働問題をめぐっては、来年につながる個別の成果が上がっている。7月9日、中国人強制連行西松建設裁判で高裁レベルでは初の原告勝利判決を手にし、9月29日には京都・大江山訴訟で花岡事件以来約4年ぶりとなる和解を勝ち取った。韓国では「日帝強占下強制動員被害真相糾明法」が成立し、11月10日に真相糾明委員会が発足。今後政府間レベルで韓国の被害者問題がクローズアップされてくる。
集会基調の中で強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワークの矢野秀喜事務局長は「個別の成果はあるが、個々の対応だけでは時間がない。とりわけ韓国の補償問題は『壁』が厚い。包括的解決のための立法化、韓国の真相糾明委員会活動との連携が重要」と報告。(1)強制労働問題の包括的解決に向け「強制労働被害者補償基金法案」(仮称)の成立をめざす(2)国内のあらゆる戦後補償団体・労組などと連携し共同行動・キャンペーン活動を展開する(3)韓国の真相糾明委員会活動と連携し日本で「協力委員会」を結成するなど支援・協力を進める、との三本柱を提起した。
午前中は、三つの特別報告により個別の成果が確認され、午後からはパネルディスカッションを通して方針が豊富化された。
日韓共同の取り組み
特別報告で、3月26日に新潟地裁から全面勝利判決を勝ち取った中国人被爆者張文彬さんの戦後補償を支援する会・高山弘事務局長は「中国現地での聞き取り、被害者の証言、強制労働現場での実証に取り組んできた。理論ではなく、加害の事実を突きつけたことが裁判所を動かす力となった。裁判にはとにかくお金がかかったが、地域での共闘の力が大きかった」と勝因を述べた。
発言するチャン・ワニク弁護士
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韓国からも、太平洋戦争被害者補償推進協議会のキム・ウンシク事務局長と弁護士で真相糾明委員のチャン・ワニクさんが参加。「情報提供を嫌がるだろう日本政府に皆さんがプレッシャーをかけてほしい。運動への若い世代の参加と日韓の若者の交流が必要だ」(キムさん)「日本政府に対して資料提出を要求する。韓国政府としてもやることになる。真相糾明・研究に日韓共同して取り組もう」(チャンさん)と、連帯を訴えた。
パネルディスカッションでは佐藤健生拓殖大教授がドイツの強制労働補償基金「記憶・責任・未来」の経験を、高橋融弁護士が中国人連行裁判の現状をそれぞれ報告。日本の戦争責任資料センター代表の荒井信一駿河台大教授は「98年当時、野中官房長官は『立法化しても憲法上問題ない』と発言している。立法化は可能だ。この取り組みを通じて信頼をつくり、将来東アジア議員同盟のようなものができればよい」とまとめた。