空前規模の自衛隊派兵
「大津波災害での支援活動に反対する人はいない」(政府関係者)。史上最大級のスマトラ沖地震・津波災害にとびついた日本政府は、「復興支援」を口実に空前の規模の自衛隊を現地に派遣した。
「医療・防疫活動、救援物資輸送」の名で陸上自衛隊、「陸自隊員・機材輸送」にあたる海上自衛隊、そして「米軍要員・物資輸送」の航空自衛隊。その規模は優に1千名を超える。陸自・海自はスマトラ島北部で、空自はタイ・ウタパオ基地で活動する。
今回の自衛隊のインドネシア等への派遣は、決して「災害復興支援」などというきれいごとではない。本当の狙いは別のところにある。
侵略軍への総仕上げ
その目的は何か。「結果的に海外任務の本来任務化に弾みをつけることになるだろう」(外務省首脳)。この発言に今回の自衛隊派兵の目的・狙いが端的に表わされている。
派遣される自衛隊は、米軍の「救援」活動の前線基地=タイ・ウタパオ基地を拠点として米軍との提携活動を展開する。同基地は、空自の輸送拠点となり、陸海空3自衛隊の運用を調整する「現地連絡調整本部」が置かれる。イラク戦争・占領でやっていることを、東南アジアでも行なおうというのである。そして、日本政府は次の3つのことを現実化させようと狙っている。
第1は、自衛隊法の改悪。通常国会で海外活動を自衛隊の本来任務とする「法改正」を図る。現行自衛隊法では、自衛隊の任務はあくまで「直接・間接の侵略への対応」に限定され、海外任務は「雑則」に基づいてなされるものにすぎない。この制約を取り払う。
第2は、3自衛隊が統一指揮下で一体で活動する「統合運用」に踏み出すこと。従来陸海空の自衛隊はそれぞれ別の指揮系統で活動してきた。しかし、これでは実戦に対応できず、米軍との共同作戦のためには3軍の統一指揮が不可欠となる。今回、自衛隊は初めて「統合運用」を試み、その体制整備を進める。
そして第3に、米軍とともに紛争地アチェに足を踏み入れ、東南アジアで「対テロ戦争」の名の紛争介入の経験蓄積を図ろうとしているのだ。
どれも12月に閣議決定された新防衛大綱の中で打ち出されたものだ。スマトラ沖地震・津波災害を好機とばかりに、侵略国にふさわしく派兵へのあらゆる制約を取り払おうとしている。このようなやり方を「火事場泥棒」と言う。
支援は民衆の国際連帯で
スマトラ沖地震・津波で15万人以上が亡くなり数百万人が被災した。救援と生活再建のために国際的支援が必要だ。日米は今、イラクに十数万の軍を送り1日数億ドルを費やしながら、計8億5千万ドルほどの「復興資金供与」で世論をあざむこうとしている。問われているのは戦争・占領の中止であり、人殺しのための巨額の費用を被災住民の生活再建・地域復興への支援に振り向けることだ。
被害を拡大したのがグローバリズムである以上、これと一線を画し、国際的監視と民衆の国際連帯による支援が必要だ。対被災国の債務帳消し、真に被災住民のためとなる支援が実施されなければならない。自衛隊派兵に反対し、通常国会での自衛隊法「改正」を阻止しよう。(1月9日)