ロゴ:国際法を市民の手に 前田朗 2005年03月04日発行876号

第62回『女性世界法廷(6)』

 2004年1月18日、インドのムンバイ(ボンベイ)で「合州国の戦争犯罪に関する女性世界法廷」が開催された。主催はNGOのアジア女性人権評議会(AWHRC)とエル・タラー・インターナショナル。世界社会フォーラムの企画の一つである。

 「記憶にとどめること」を第一に掲げ、ほとんどジェノサイド状況での生活を強いられ、人々が人間らしく生きられない生活様式の現実を直視し、超大国によるグローバルな覇権による奴隷化に抗する民衆の闘いを呼びかける法廷である。

 まずラムゼー・クラーク(アメリカ元司法長官)が開廷挨拶を行った。「湾岸戦争」から2003年のイラク戦争に至るアメリカの戦争政策を批判し、ブッシュを大統領弾劾にかけるべきこと、民衆法廷でも並行して厳しい批判を行って大統領選で落選させる運動を構築しなければならないと訴えた。

 主催者のコリーヌ・クマール(AWHRC)は「新しい政治的想像力に向けて」と題した基調講演を行い、被害証言、音楽、詩、映像を駆使して、傍聴人も陪審員も歴史の転換点に眼差しを向け、戦争犯罪の実態を視覚的にも聴覚的にも把握し、イメージして、平和を求める21世紀の民衆、特に女性のための政治的想像力を遥か彼方の遠くまで及ぼしていくことを訴えた。

 法廷は6つのセッションによって構成された。各セッションはビデオ、詩の朗読、歌、ラップ、被害者証言、支援者・研究者証言等で凝縮した時間と空間を作り出した。

 第1セッション「炎の嵐の時間――合州国と大量破壊兵器」では、大量破壊兵器をめぐるグローバルなパラノイアを指摘し、「核戦争」の第一幕は広島・長崎、第二幕は劣化ウラン弾使用であるとして、その実態解明をめざした。サハル・サバ(アフガニスタン女性革命協会)は、アフガニスタン空爆がもたらした被害全般を取り上げ、続いて前田は、ICTA検事団がまとめあげた「論告」を活用して、アフガニスタンにおける劣化ウラン被害の実態を紹介した。リ・チクィ(ハノイ大学)はベトナム戦争における枯葉剤作戦被害を報告し、ジョ・チョルリョン(朝鮮民主法律家協会)は朝鮮戦争における生物兵器使用について報告した。

 第2セッション「風の嵐の時間――世界各地における合州国のミリタリズムと経済犯罪」では、エミリ・カヒログ(ガブリエラ)が「米軍基地と性暴力」、ユニス・サンタナ(プエルトリコ平和連合)がヴィエケス島米軍基地問題、ポル・デヴォス(ストップUSA)がアメリカのミリタリズムと経済犯罪について報告した。アメリカが世界各地で行ってきた戦争犯罪の実相がまざまざと浮かび上がる一日であった。

 第3セッション「砂嵐の時間――イラクにおけるジェノサイド」では、モハメド・ダウード(イラク人権擁護連盟)、コレット・ムーレルト(第三世界医療援助)、アレハンドロ・ベンダナ(ジュビリー・サウス)などが報告した。

 第4セッション「野獣の果実――合州国内の戦争」では、ミリラニ・トラスク(ハワイ先住民ネットワーク)、シェリ・ホンカラ(ケンジントン福祉協会)、グロリア・ラリバ(IAC)などが報告した。

 第5セッション「嵐の目撃者――嵐に打ち克つ者、レジスタンスの声」では、メアリ・ケリー(アイルランド反戦運動)、アイシェ・ベクテ(イラク世界法廷)、マガリス・アロチャス(キューバ女性連盟)などが語った。

 第6セッション「雨の歌の時間――賢者の声:平和と正義」では、陪審員のルイザ・モルガンティニとビリヤナ・カシッチが「新しいアメリカの世紀」を批判し、最後にクラークが反戦平和運動と民衆法廷の意義を強調して閉幕した。

(参考文献)World Court of Women on US War Crimes. January 18, 2004 World Social Forum, Mumbai, India.

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