ロゴ:カルテの余白のロゴ 2005年03月04日発行877号

『幼児も産婦人科に(上)』

 産婦人科というと、どんなに若くても十代半ば以後のイメージがあると思います。でも、幼児の年齢でも産婦人科を受診する機会もあるのです。

 まずは、生まれたばかりの赤ちゃんから。

A「おむつに赤い血が! 股のあいだに、傷でもつけたんでしょうか?」と、おっかなびっくりで、まだピカピカの新人おかあさん。答えは、女の赤ちゃんの「生理」。お母さんの女性ホルモンの影響で、生まれてすぐ擬似生理が起こる赤ちゃんがいるのです。病気ではなく一過性なので心配無用。

 次に、出産後すぐに指摘されることもあるけれど、お誕生を過ぎるまで治療は急がない、陰唇癒着(癒合)。程度の違いはあるけれど、生まれた直後の診察で、陰唇がいかにも部分的にくっついて見えます。実際、普通の力でひっぱってもくっつきを離すことはできないので産婦人科受診となります。たいていは、麻酔をして強くひっぱると、癒着ははがれて通常のようになります。ひどいときは少し外科的処置もしますが、頻度は少ないです。

 しっかり活発に動きまわる2歳以上になると、けがの受診が増えます。婦人科に来るのは、外陰部のけが。いすやおもちゃ、公園の遊具で股間を強く打ってのけががほとんどです。幼児の陰唇や膣は特にやわらかく、ほんのちょっとした擦り傷でもおかあさんがびっくりするくらい出血して、圧迫できないので血は止まりにくいものです。たとえ一針でも縫合する方が止血が簡単なこともあります。さらに、大きな血腫となって切開することもあります。

 膣閉鎖などの外陰異常も幼児時にわかることもありますが、通常、思春期まで無処置で問題ありません。また、外陰の異常の中には、染色体やホルモンの異常のため、小児科で継続して治療や観察が必要な特殊な場合もあります。

 そのほか、最近では超音波の進歩もあって、年齢の低い幼児でも性器から発生したと思われる腫瘍や嚢腫がみつかります。中には子どもに特徴的に発生する悪性腫瘍もあるので診断、治療は婦人科でおこなわれます。

 幼児期のさまざまな婦人科の病気は、まわりからみて「こんな小さい子に…」と、ご両親など周囲の大人の多大な不安と心配をひきおこしがちです。単に、一刻も早くとりあえず、ではなく、あくまで子どもの成長にともなう経過を見通した対応が大切です。

 さて、これらが幼児の婦人科のすべてではありません。いたいけない幼児の心の成長、発達に関係したり重大な影響を及ぼす婦人科的問題もあります。次回にお話しましょう。

(筆者は、産婦人科医師)

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