2005年03月25日発行880号

【解決するまで頑張っていきたい アジア反靖国遺族共同行動 戦後補償解決の年に】

 小泉首相は就任以来毎年、靖国神社参拝を強行している。国内外から戦争国家作りへの批判の声が高まる中、アジア反靖国遺族共同行動が3月3日、都内で取り組まれた。

靖国神社に向かう遺族
写真:鳥居をくぐり要請行動に向かう遺族たち

 呼びかけたのは、平和遺族会全国連絡会や在韓軍人軍属裁判を支援する会、東京・千葉・大阪・山口・四国・九州・沖縄の小泉首相靖国神社参拝違憲訴訟団など11団体。日本・沖縄・台湾・韓国4地域の遺族が初めて一堂に会する画期的な共同行動となった。

 靖国神社への合祀取消(霊璽《れいじ》簿からの削除)要請を皮切りに、内閣府要請、国会内集会、外国特派員協会記者会見、市民集会と一日行動が展開された。

 靖国神社の宮司は「係争中」を理由に会おうともせず、応対した広報課長も「一たん祀った『みたま』を取り下ろすことはできない」と言うばかり。実行委員長で真宗遺族会事務局長の菅原龍憲さんは、戦死した父親が1946年に靖国神社に合祀されている。「遺族の意思によらず合祀し、合祀取消の要請さえ拒否するのは違法行為だ。国家が信教の自由を犯している」と厳しく批判する。

原住民の誇りを侮辱

 集会では、各地域の遺族がそれぞれの思いを語った。

集会でそれぞれの思いを語る各地域の遺族(3月3日・東京)
写真:勢ぞろいした遺族が次々にマイクを握る

 日本の植民地にされた台湾では、太平洋戦争開始直後の42年3月から先住民が高砂義勇隊として強制的に最激戦地に追いやられ、多数の戦死者を出した。靖国神社には日本兵として徴用された台湾人の戦死者2万6千人が祀られている。

 原住民タイヤル族で台湾国会議員のチワス・アリさん(大阪台湾靖国訴訟原告団長)は「私たちの肉親、被害者と加害者の軍人を一緒に祀ってはいけない。加害者の『みたま』を尊敬する小泉首相の靖国参拝は原住民の誇りを侮辱する行為です」。5年前か肝がんを患っているチワスさんは「命は長さではない、どれほど価値あることを残したかだ。戦争によって外部から侵入され犯された命を思うと心が痛む。そんな台湾の歴史を明らかにしたい」と訴えた。

 韓国からは、太平洋戦争被害者補償推進協議会会長で大阪アジア靖国訴訟原告の李煕子(イ・ヒジャ)さん。李さんの父親は行き先を告げられることもなく徴用令状で中国戦線にかり出され、戦死した。その事実を知ったのは戦後半世紀が過ぎてから。「被害者遺族として何度日本に来たか数え切れない。父は日本が引き起こした侵略戦争によって戦場で見捨てられた哀れな犠牲者だ。戦後補償問題は終わりなきマラソンのようなものだが、解決するまで頑張っていきたい」

4万人以上が名乗り

 同事務局長の金銀植(キム・ウンシク)さんは「日帝強占動員被害真相究明委員会は政府3人、民間人6人で構成され、2月1日から被害申告を受けつけている。すでに4万人以上が名乗りを上げ、最終的に数十万人になる。被害の真相を明らかにするために、日本政府が所有する供託記録や厚生省の記録などの公開が必要だ。今年の8月15日には被害補償の全貌が明らかになるだろう」と報告。戦後補償要求を日本政府につきつける運動が韓国で新たに起こっている。

 沖縄からは沖縄靖国訴訟原告団長の金城実さん。請求を棄却し参拝の公務性にも言及しなかった那覇地裁の判決(1/28)にふれて「裁判官は摩文仁の丘の現地まで調査したが、あれはピクニックだったのか。法の番人が憲法判断を回避した。三権分立もズタズタだ」と怒る。

 戦後60年の今年は、日本政府が「解決済み」の根拠とする「日韓請求権協定」締結40年でもある。“今年こそ戦後補償解決を”めざす2005年キャンペーン運動を成功させよう。

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