2005年04月29日発行885号

【どう見る「UFJ総研報告」 「中高年フリーター時代」は許さない 大企業の責任追及と均等待遇実現を】

中高年フリーターが200万人に

 金融機関系シンクタンクのUFJ総合研究所は、35歳以上で定職についていない中高年フリーター(パート・アルバイト・派遣社員・契約社員など非正規労働者および失業者などで学生・主婦を除く)が2021年には200万人を突破すると予測した報告を発表した(4/4)。

UFJ総合研究所調査レポートより
写真:2021年までの長期予測をグラフで表す

 同報告によれば、中高年フリーター200万人(最悪のケースでは300万人を予測)社会では、税収1兆1400億円減、社会保険料1兆900億円減、可処分所得(消費・貯蓄用所得)5兆8千億円減となりGDP(国内総生産)を1・2ポイント押し下げるという無視できない影響が現れる。またフリーターは貯蓄や退職金もなく、基礎年金(月額6万6千円)だけでは暮らしていけないから生活保護を受給せざるをえなくなり、国の生活保護費負担は膨れ上がる。さらに、不安定な所得によって婚姻率も押し下げ、そこから出生率も年間1〜2・1ポイント押し下げるという。

 同報告は、この深刻な事態を招かないように行政はフリーターに対する就業支援を検討していかなければならないと結論付けている。

雇用を悪化させたグローバル資本

 このUFJ総合研究所報告は、フリーターがその境遇を抜け出ることが困難な理由を、「フリーターや無職の期間が長かった人がフリーター経験を評価されて正社員になるのは難しく、取り残されてしまうという現実がある」からだとしている。つまり、単純労働で熟練や経験が蓄積されていないから企業は正規採用しないというのである。

 これは、不安定雇用を急増させたグローバル資本の責任を労働者個人に転嫁する本末転倒の論理だ。

 現在、フリーターは全労働力人口(5372万人)の3分の1(1564万人‐04年労働力調査)を占めるところまで増大している。その原因は、大企業が人件費コストを大幅に切り下げるために率先して正規雇用労働者をフリーターに置き換え、政府が労働者派遣法(85年)などの規制緩和でそれをバックアップしてきたことにある。当初16業務に限定されていた労働者派遣は、26業務へ拡大(95年)、製造現場など6業務以外原則自由化(99年)と改悪につぐ改悪を重ね、昨年3月、派遣期間が1年から3年へと延長され、製造現場への派遣も解禁された。

 大企業は自ら派遣会社を設立し、そこに正社員を強引に転籍させた上で、派遣社員として従来とまったくかわらない業務に派遣させるというあくどい手口を使った。UFJ銀行などの都市銀行のリストラはその典型であった。

 さらに製造現場への労働者派遣の禁止をかいくぐる手段として業務請負が広く行われてきた。業務請負元から労働者だけが請負先の工場に派遣され、請負先の指揮命令で働かされる―請負の実態などどこにもない違法行為がまかり通っている。

 フリーターは正社員とまったく同じ労働に就かされ、フリーターという雇用形態だけで低額の時給労働を強いられている。こうした人件費削減が大企業に「過去最高益」(3月期決算)というぼろ儲けをもたらしている。

  ◇   ◇   ◇

 フリーター問題は、個別労働者の就労支援だけではけっして解決できない。単純労働であれ熟練労働であれ、好きなときに雇い入れ、好きなときに解雇するという大企業=グローバル資本の不安定雇用政策を反社会的行為として規制し、社会的な責任を追及しないかぎり根本的な解決はない。 

 雇用形態による差別禁止と「同一労働同一賃金」原則に基づく均等待遇の保障、パート労働者の権利を保護するILO(国際労働機関)175号条約の批准など、労働者保護法制の強化こそ「中高年フリーター時代」を回避するために不可欠なものだ。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS