2005年05月20日発行887号

【「カラ残業処分は不当」 職員が大阪市を提訴 物言えぬ職場は福祉切り捨てへの道】

 大阪市のカラ残業問題で、処分を受けた職員2人が「カラ残業処分は不当」として大阪市に対して慰謝料の支払いを求める訴訟を5月11日、大阪地裁に起こした。

提訴の思いを語る桑代さん(右)と河上さん(5月11日・大阪)
写真:提訴の思いを語る桑代さん(右)と河上さん(5月11日・大阪)

 訴えたのは、淀川区役所生活保護ケースワーカーの桑代俊博さんと3月末に退職した元平野区役所生活保護担当係長の河上賢さん。

 大阪市は3月30日に、6331人もの職員への処分を行った。全職員の13%という前代未聞の大量処分で、過去にこれだけの処分を行った自治体はなく、全く異例のことだった。

 訴状によれば、「処分は、大阪市当局が市職の一部の幹部との間で行ってきた悪弊を隠蔽し、あたかも個々の職員の責任であったかの如く世間に印象づけ、大阪市当局への世間からの批判を避け、物言わぬ職員をつくるためになされたものであるといわねばならない。それ故、不十分な調査で、しかも処分対象者より弁明を聞く機会も与えず、職員6331人への大量処分が強行された」と指摘する。

多くの職員から共感

 原告桑代さんの場合は、少なくとも年間127時間の残業をしているにもかかわらず、支給された超勤手当は78時間分。それでも5時間の過払いがあるとして返納を求められ、「非行があった」と文書訓告された。

大阪市役所前で宣伝行動(5月11日)
写真:大阪市役所前で宣伝行動(5月11日)

 河上さんの勤めていた区役所では、4月から8月までの超過勤務を9月以降に振り替えていた。「組合との協議で超勤予算が下ろされる9月以降でないと超勤手当は支給できない」との上司の命令で、4月から8月までの超勤を9月以降に日を替えて付けたことが、「非行」とされ口頭訓告処分された。

 提訴への思いを桑代さんは、「説明・資料確認をしている途中で一方的に処分を受けた。私と同様に、サービス残業しながら処分を受けた多くの職員から共感を得ている。『非行』に値するとされ、傷つけられた名誉を回復したい」と語る。河上さんは、「大阪市職員は詐欺・横領集団のように批判されるが、個々人が悪いのではない。『カラ残業』が作り出された背景とその責任を市民の前に明らかにするのが、市民の信頼を取り戻す道だと考えた。職員が物が言えない状態にしたあとには、市民もがまんしろと福祉の切り捨てが必ずやってきます」と述べる。

5月28日に市民集会

 2人は個人加盟の地域ユニオン「なかまユニオン大阪市職員支部」に所属しており、提訴後には、ユニオンのメンバーとともに大阪市職員や市民に対して一斉宣伝行動に取り組んだ。

 なかまユニオン大阪市職員支部は5月28日午後2時からエル大阪で、「カラ残業処分は福祉切り捨てへの道 大阪市政を市民の手に」とのテーマで集会を開く。

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