2005年06月03日発行889号

【889号主張 / 首切り・人殺しの民営化 / 責任追及と解雇撤回へ】

原因究明なき幕引き

 JR西日本・福知山線脱線転覆事故から1か月。過去40年で最悪、107名の死者を出した大事故にもかかわらず、早くも幕引きの動きが始まろうとしている。

 JR西は「再発防止の5項目の取り組み」を発表し、遺族・被害者を分断する補償交渉も開始された。5月末「安全性向上計画」提出、6月株主総会で首脳陣辞任、新型自動列車停止装置(ATS―P)設置で6月下旬にも運転再開、というシナリオだ。

 政府・グローバル資本は今回の事故から、民営化推進の国策と命を奪う儲け至上主義に責任追及の矛先が向かうことを恐れている。イギリスでは、鉄道民営化失敗の象徴ハットフィールド事故(00年10月)以来の世論と運動で部分的な再国有化を余儀なくさせ、現在も論議が続いている。世界各国でグローバル資本主義によるあらゆる公共部門の民営化に対する激しい闘いが繰り広げられている。

 郵政民営化に奔走する小泉は民営化批判への波及は何としても避けたいのである。

首切りと安全無視

 だが、事故の根本原因が政府・JR一体で進めてきた首切り・安全無視の民営化であったことは決して覆い隠せるものではない。

 設置されていればこれほどの事故は防げたはずのATSは、実は67年以来、旧運輸省通達で大手私鉄に義務付けられていた。ところが、87年国鉄民営化とともに同通達は廃止。JRに安全確保の「負担」をかけないためだ。旧国鉄安全綱領「安全は輸送業務の最大の使命である」を捨て利潤優先とすることに民営化の眼目があった。JR西は儲け至上でひた走り、05年3月期の株主配当を5千円から6千円に引き上げるために20億円を使う一方、9億円でできる福知山線へのATS―P設置は先送りしてきた。

 運転士を制限速度オーバーに追い込んだ「日勤教育」や懲罰・監視。労働者を人間扱いせず、ひたすら会社への服従を強要し、従わない者は排除する。民営化時に「人材活用センター」「清算事業団」という収容所に労働者を送り込み、解雇したのと同じ手口だ。そして政府は、人権を否定するJRのこの労務政策を容認し続けてきた。公的救済機関である労働委員会の「職場復帰」命令さえ無視した姿勢は一貫している。

 グローバル資本の競争原理がむき出しになり、安全切り捨て路線が極限に達した結果が今回の大事故だ。民営化の下、グローバル資本の横暴を放置すれば、国民の命も生活も破滅的な事態となる。

被害者・原告団とともに

 民営化18年の生き証人としてその不当性を暴いてきた鉄建公団訴訟原告団は、「解雇撤回の闘いが犠牲になられた皆さんに報いることとなる」(5/17声明)と、分割民営化見直しと徹底した安全体制確立を求めている。それは、近年の雪印乳業、三菱自動車などの汚染・欠陥・事故かくしに象徴される、利潤至上のグローバル資本に命を脅かされているすべての人々にとって共通の課題となる。

 被害者・原告団・市民が手をつなぎ、事故原因の徹底究明・解雇撤回を求めよう。民営化を断罪し、再国有化へ利用者・労働者による民主的規制を強めよう。(5月22日)

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