2005年06月03日発行889号

【沖縄・辺野古ルポ / ボーリング調査は許さない / 「基地ができれば海が死ぬ」】

防衛施設庁の雇った「警戒船」。後方は反対住民の座り込みテント
写真:「警戒船」の表示をした船が並んでいる

 「普天間基地返還合意」から9年が経つ。新基地建設がますます非現実的になる中で名護市辺野古では、いまも防衛施設局の執拗な「調査作業」が繰り返されている。平和を破壊する軍事基地は、準備の段階から地域の自然環境も生活環境も破壊する実態を曝している。普天間包囲行動成功の翌日、防衛施設局の悪質なボーリング調査と闘う現地を訪れた。


環境破壊そのもの

 名護市の東海岸、辺野古漁港についたのは朝6時前だった。日の出の時間は過ぎているが、梅雨の雲に隠れて太陽は見えない。

 「1番2番、出ますよ」「3番5番、早く乗って」

 乗船を促す声は殺気立ってさえいる。2隻の漁船にはスウェットスーツを着込んだ8人前後の人が乗り込んだ。

 沖合のリーフに沿って、4基のボーリング調査用仮設やぐらがある。東から順に番号がついている。4番は、台風で撤去され、今はない。夜間作業を阻止するために、何人かが夜を徹してやぐらに待機した。その交代要員が出るところだ。

調査用やぐらをめぐるせめぎあい
写真:やぐらのまわりを船が回る

 那覇防衛施設局は4月末から、夜間作業を強行した。県の出した公有水面使用同意の条件では、ジュゴンをはじめ海洋生物への影響が出るため、作業は出港・入港も含めて日の出から日の入りまでの間に限られている。明らかに条件違反だ。しかも、この違法作業が強行されたのは「辺野古見直し」を日本政府も口にし始めてからだ。

 建設自体が白紙になろうとしているにもかかわらず、建設のための調査作業を強行・続行する。取り返しのつかない環境破壊を引き起こすだけに、犯罪行為といえる。

 7時55分、隣接する米軍基地キャンプ・シュワーブから軍隊ラッパに続いて、「星条旗よ永遠なれ」「君が代」の音楽が流れた。それに合わせるかのように、防衛施設局が雇った漁船13隻が相次いで出港した。中型船には「警戒船」、小型船には「作業船」の表示板がついている。キャンプ・シュワーブにつくられた仮桟橋から、防衛施設局の職員や作業員をやぐらに運んでいく。

人の心も殺す

 第5やぐらのまわりを漁船が回り出した。

 「黒い服を着ているのが国の作業員です。警戒船がこちらの船を近づけさせないように高速で回っています」

 港にある座り込みテントの来訪者に、2km沖合の様子が解説された。狭い海域に何隻もの船が集まっている。そこを高速で巡航する行為は、衝突も辞さない悪意を感じさせる。

 反対派の漁船は、近在の漁港から駆けつけたものが多い。「辺野古の海人(うみんちゅ=漁民)が漁をしない。良好な漁場が荒れてしまう。ここに基地ができれば海は死んでしまう」と応援にかけつける海人は言う。海で生きる人々の偽らざる心境だ。

 目の前に広がる水平線が基地に遮られたらと想像してみた。水の流れが止まり、死臭を発する巨大な水たまりが頭をよぎる。

 防衛施設庁は、毎日、小型船で数万円、中型船で20〜30万円もの借り上げ代を支払っていると聞く。辺野古の海人は漁をすることがなくなった。漁船が運ぶのは自然の恵みではなく、命を縮めるための人や資材になった。基地の建設は、自然だけでなく人の心までも殺していくのだろう。「金を持つのは病気を持つのと同じことさ」と地元のおばあが言った。

建設計画の撤回を

 普天間基地の「移設先」として辺野古への新基地建設が浮上してから9年。政府は、5月18日にいたって、やっと夜間作業の中断に言及した。だがむしろ、政府は一刻も早く基地建設計画そのものを撤回すべきだ。世界の戦場と直結する沖縄。ファルージャを始めイラク民衆を虐殺する殺人集団を送り出している沖縄の基地を撤去すべきだ。

 座り込み用テントの中に、阿波根昌鴻さんの写真が飾られていた。非暴力・反戦運動を牽引した阿波根さんは多くの言葉を残している。「命はぐくむ土地を人殺しには使わせない。土地は万年、金は一時」。海も同じだ。 (T)

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