2005年06月10日発行890号

未来を築けイラク自由会議とともに MDS国際連帯のつどい

【国際連帯こそがグローバル資本を追いつめる】

MDS(民主主義的社会主義運動)佐藤和義委員長

 民主主義的社会主義運動(MDS)は、イラク市民レジスタンスへの支援・連帯を訴える「進め!イラク自由会議 MDS国際連帯のつどい」を全国5か所で開いた。イラク自由会議(IFC)サミール・アディル議長、イラク女性自由協会(OWFI)エルハム・アブドゥルスタルさんが占領終結・政教分離政府樹立をめざす現地の闘いを報告。また、MDS佐藤和義委員長が日本から連帯を広げる意義について講演した。


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危険にされされるイラク市民

◆ブッシュは国民議会選挙を「際だった成功」と評価したが、3か月以上たって「移行政府」が発足したにすぎず、移行政府=かいらい政権に国民統合能力はない。

 タラバニ大統領は「連合国軍の軍事力が不可欠」と述べた。4、5月米軍とイスラム武装勢力のテロで市民500人以上が殺害された。アメリカはテロを口実に5月8日にはイラク西部の町カイムを攻撃、100人以上を虐殺した。25日には西部ハディーサに兵士千人を投入し掃討作戦を始めた。移行政府も5月26日、軍・警察4万人がバグダッドでの掃討作戦を開始すると発表した。イスラム武装勢力もテロで多くのイラク市民を殺害した。

 市民の安全が確保されない現実は全く変わっていない。日本はイラク石油省と技術協定を結び、サマワでODA(政府開発援助)による火力発電所建設を進めている。グローバル資本主義は利益を獲得するためにイラクを駆けずり回っている。

広がった国際的支援

◆3月18日、イラク市民レジスタンスの新たな組織―IFCが結成された。目標は占領軍撤退、イスラム武装勢力の解散、政教分離、民族主義でない暫定政府樹立だ。

 結成に前後して、市民レジスタンスが力を持ってきていること、国際連帯で闘えば非暴力で勝利しうることを示す2つの事件が起きた。

 3月15日バスラ大学生がイスラム武装勢力に虐殺された。英占領軍などが黙認するのに対し、学生はストライキに立ち、市民も支援した。イラク各地の学生、英オクスフォード大学などの学生自治会も連帯を表明し、武装勢力は謝罪した。5月5日には大統領率いるクルド愛国同盟がレブワール・アレフ氏(イラク労働者共産党中央委員)を拘束したが、国際的抗議の中で釈放させた。

 IFCの呼びかけ人にイランの組織、日本のMDSが参加しているのはIFCが国際的に活動しグローバル資本主義の軍事的支配・イスラム武装勢力と闘っていくためだ。

民主主義こそが勝利の力

◆世界の反戦運動はイラク戦争開戦阻止寸前まで戦争勢力を追い込んだ。ブッシュ、ブレアの息の根を止めるため明確にしなければならない点がある。グローバル資本主義に勝利する力は民主主義であり、民衆の連帯だということだ。イスラム武装勢力のテロはイラク民衆にも向けられている。これとの決別抜きにグローバル資本主義には勝利しえない。

 世界の反戦運動の中にこの点をあいまいにする傾向がある。米軍ともイスラム武装勢力とも闘い、民衆の生活を守ろうとする勢力が存在していることを知らせていく必要がある。

 日本の平和運動の欠点は、MDSが連帯していることからイラク市民レジスタンスを無視する傾向だ。イスラム武装勢力を支持するのか、しないならばどう評価するのか明らかにすべきだ。IFC無視はイラクの現実を変える力とはならない。

 もう一点は移行政府に期待をかける傾向だ。しんぶん赤旗は「国づくりの大きな一歩」と評価する。駐留を認めている移行政府の承認から占領反対方針は出てこない。

自衛隊撤退抜きに「9条」は守れない

◆日本は資本・商品輸出の権益を守るため軍事力行使を狙っている。そのためには、国内の戦争体制を構築する必要がある。それが情報統制、運動弾圧、国民保護法制による民主主義的権利剥奪体制だ。「日の丸・君が代」を強制し、中国や韓国への排外主義を煽り立てる。その総仕上げとして改憲が狙われている。

 全国で9条の会が組織され、改憲反対の多くの市民の存在が明らかとなっているが、改憲支持勢力も増大しつつある。

 護憲勢力の弱点は、第一に占領軍・自衛隊撤退と結合する闘いが弱い。9条下で自衛隊は派兵され、駐留で経済侵攻を助けている。航空自衛隊は米軍の武器弾薬兵士を運び続けている。自衛隊はすでに侵略軍なのであり、9条は破壊されている。侵略している現実との対決抜きに護憲はありえない。

 日本共産党の立場は違う。不破議長は「解消に至るまでは共存と平和的活用が基本」と海外派兵を容認した。志位委員長は「『自衛隊の現状を憲法に書くだけの改憲なら賛成』と考えている人々も含め、圧倒的多数は、海外での武力行使のための改憲には反対している。ここで広く大同団結をかちとる」と述べた。明文改憲がされなければ自衛隊が何をしようとかまわないことになる。9条改憲阻止に燃える人々に応える方針ではない。撤退が明確でない「大同団結」は日本を変革しない。

 第二は、改憲は9条だけでなくグローバル資本主義国にふさわしい体制を構築するためのものであることだ。自衛隊の現状を追認する9条改憲だけでなく、生存権など国民の権利を否定し、権力が国民に義務を要求するために改憲が狙われている。

 これと全面的に対決し、日本および世界を民主主義に貫かれた社会に変革していく闘いでなければ勝利しない。

 第三に、行動方針が不明確なこと。9条の会の講演会だけでは闘えない。権力との対峙点は、民主主義・平和勢力が地域を組織するのか、国民保護法制で権力が地域末端まで組織するのかのせめぎあいだ。自衛隊を追い出し、平和な地域を作るために国民保護法に基づく総動員体制と闘う無防備地域宣言運動が必要だ。

戦争国家路線との対決を

 民主主義運動に求められているのはグローバル資本主義が進める戦争国家路線との全面的対決。自衛隊の即時撤退、イラク市民レジスタンス連帯、無防備地域宣言運動、国民保護法制実行阻止の闘いだ。グローバル資本主義との闘いは一国内だけでは勝利できない。アジアの多くの仲間たち、IFCとの連帯、世界の反戦運動との連帯が必要だ。

 日本国内に運動を限定し、イラク侵略を問わず、積極的に無防備地域宣言運動を進めない立場からは改憲阻止の展望は見えてこない。国際連帯を進め、日本の戦争国家路線を転換させねばならない。

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