ロゴ:生きる 佐久間忠夫 2005年06月10日発行890号

第112回『フランス(1)』

 2004年3月ころ、フランスへ行くという話が出た。映画『人らしく生きよう─国労冬物語』のフランス語版ができて、アメリカに続き、海外で上映される。すごいことだよな。

 行ったのは、制作したビデオプレスの松原明と佐々木有美さん、出演者の留萌闘争団・大谷英貴と友枝さん夫妻、山田則雄と俺の6人。6月3日12時5分成田発だった。初めて12時間におよぶ飛行だから緊張したね。けど、6時間くらい乗ってたら、もう後半分と思って安心できた。その飛行機の乗客は日本人が90%。フランスの飛行機なのにほとんどが日本人乗客でびっくりした。

 時差が6時間。パリ現地時間で18時頃ドゴール空港に着いた。以前に屋根が落っこちた空港だ。ドゴールと言えばフランスで一番大きな空港で、広々としているけど羽田や成田みたいに騒然とはしていない。本当に静かだった。だから、俺らが世話になるエルワンさんや字幕を作る時に協力いただいた久保田ゆりさんらが迎えに来ているのがすぐに分かった。

 それからエルワンさんと通訳の田代優子さんが運転する車2台に分乗して市街地に向かった。後で知った話だが、田代さんは15歳の時に在日米軍基地反対のデモに参加しただけで、東京の刑務所に12泊も拘留された経験があるという。

空港を出ると本当に静かな家並で、高い建物なんかない。まず目についたのは黒人が多いこと。

5〜6階建てマンションの4階に住むエルワンさんの所に着くと、ボルドー大学の教授やエルワンさんの友人なども来ていて、歓迎パーティー。終わったら夜中の12時頃だった。

それから、エルワンさん宅に泊まる山田らと一緒に歩いて10分くらいの所にあるモンマルトルに行った。

小高い丘に行くと人がいっぱいでさ。若い人ばかりじゃねえんだ。老若男女なんだよ。丘の上がちょうど座れるようになっていて、パリの街が一望できる。田代さんが「日の丸だよ」って。見たらでっかい真っ赤な月が出ててすごいという印象だった。

後ろに教会があって俺が「すごく立派な教会ですね」って言ったら、エルワンさんの友人が「私は嫌いです。ファシズムが建てたものだから」って。フランスが占領されていた時代に今でも根強い反発があるんだね。

丘の周辺は夜中でも芸術の街らしく芸術家風の人たちが飲み歩いている。バーとか盛り場がいっぱいだ。山田が写真を撮ってたら、若い奴が尻を出してポーズを作ったり。日本から来たというと、彼らが話しかけてきて積極的だよね。初めて会っても珍しがって寄ってくる。

(鉄建公団訴訟原告)

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