2005年06月10日発行890号

【福祉切り捨て許すな!大阪市政を市民の手に 「カラ残業」処分撤回裁判支援へ5・28市民集会】

激励物を手にする原告の桑代さん(右)と河上さん(5月28日・大阪)
写真:「カラ残業処分は福祉切捨てへの道。大阪姿勢を市民の手に!」と書いた横断幕をひろげる原告

 大阪市の「カラ残業」に端を発した「職員厚遇」問題キャンペーンは、公務員の削減、民間委託、社会福祉の切り捨てを一気に加速しようとしている。5月28日、大阪市内で「カラ残業処分は福祉切り捨てへの道 大阪市政を市民の手に 5・28集会」が約100人の参加で開かれた。「カラ残業処分は不当だ」と大阪市を提訴した裁判闘争を軸に、市民とともに大阪市を変えていく取り組みが始まった。


職員と市民の信頼回復

 集会を主催したのは、なかまユニオン大阪市職員支部。今年3月に結成し、5月12日に職員団体として登録された新しい労働組合だ。

 大阪市が3月30日に行った全職員の13%に当たる6331人への大量処分。この処分を受けた支部組合員2名が5月11日に「カラ残業処分は不当」と大阪地裁に提訴した。

 集会の第1部では、裁判原告が改めて提訴の思いを訴えた。

 淀川区役所生活保護ケースワーカーの桑代俊博さんは、「少なくとも年間127時間の残業をしているにもかかわらず、支給された超勤手当は78時間分。それでも5時間の過払いがあったとされ、『非行があった』と文書訓告された。全く納得ができないと提訴に踏み切った。福祉に働く者として、また大阪市民の一人として、進められている福祉の切り捨てに歯止めをかけていきたい」と訴えた。

 元平野区役所生活保護担当係長の河上賢さんは、「処分を受けた新採の若い職員に、親戚から電話がかかってきた。『何を悪いことをしたのだ』と詰められた。しかし、問われても、本人は説明できない。このままでは、職員は非行職員の烙印を押されたままだ。何が原因で、どこに責任があるのか。裁判で明らかにして、職員と市民の信頼関係を回復していきたい」。

市民の注目と関心を集めた5・28集会
写真:

 原告を励ましたのは、一人でも入れる個人加盟の「なかまユニオン」のメンバー。テーマソングの「あんたが主役主人公」の歌には、早速「残業してもつきません 不当な処分をするなんて こんな大阪市おかしいぞ」の歌詞が盛り込まれた。

 不当処分撤回裁判は6月29日に第1回の口頭弁論を迎える。カラ残業の原因と責任を明らかにするこの裁判闘争を支援する「カラ残業不当処分撤回裁判を支える会」(仮称)を発足させることも報告された。

市民にも必ずしわよせ

 集会の第2部は、パネルデスカッション。

 パネラーには、原告2人に加えて、裁判の原告代理人の桜井健雄弁護士、市民団体「見張り番」代表世話人の松浦米子さん、関西地区読谷郷友会会長の平安名常徳さんの5人。

 平安名さんは「沖縄の読谷村では、住民の奉仕者としての自覚を持った職員に住民は全幅の信頼を置いていた。地域住民と結ばれた大阪市職員、労働者が胸をはれる労組によみがえってほしいとの信念で、2人を支援する」と語る。松浦さんは「6331人の処分が、なぜこんなに早くしたのか。どう調べたのかに疑問を持っていた。市民としては事実を知りたい。事実を知らなくては、市民は何もできない」と訴えた。桜井弁護士は「裁判での市側の答弁が一番の注目点。実態を明らかにしていく」と裁判への決意を述べた。

 フロアからは活発な質問や意見が出た。

 大阪市職員からは「マスコミが市民と職員の敵対関係をあおり、大阪市がやっている大きな無駄使いを隠している」「職員間で相互に話せない、しゃべれない実態がある。議論をつくりだしていかなければならない」との声が出された。

 「親子2代にわたって生活保護をもらっている人もいる」「大阪市は職員が多いのではないか」という意見に対しては、「2代だから悪いのではない。社会的弱者は守らなければならない。弱者切り捨てに異議を唱え、上司におかしいと言える職員をつくっていくことこそ必要」「職員を削減し、民間委託にしたいのが大阪市の狙い。職員は人件費だが、民間委託は物品費で処理できる」の反論も。

 福祉の切り捨てに危機感をもつ市民からの訴えもあった。「チラシを見て、市職員だけの問題ではないと思った。市民にもしわよせがくる。母子家庭で、母子手当をもらい、医療費も無料だったのが、昨年から最高500円支払うようになった。これからは経済的支援から自立支援と、役所で言われた。一人の市民として応援したい」

 また、「昨年、無防備条例案を直接請求したが、議会の傍聴は本会議のみ。委員会は『(市民の)傍聴は許さない』と書いてある。こんな大阪市の非民主的体質を内から変えていく闘いとして、裁判に期待する」と、市民からの期待も表明された。

 連合傘下の大阪市職が事務所の労働組合の看板を隠し、市民から姿を隠している中で、5・28集会は大阪市職員が市民の中に入り、市民の声を聞き、ともに市政を変えていく第1歩の取り組みだった。

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